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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2000年8月号

調査 平成12年度 学校基本調査速報徹底分析
専門学校の学生数は1,895人(対前年度比)の微増に
▼分野・学科の二極化傾向は一層鮮明に

 このほど発表された文部省の学校基本調査速報によれば、専門学校の学生数は63万7,264人(平成12年5月1日現在)で、2年連続して増加した。5年度ピーク時の70万1,649人には及ばないが、一昨年度までの連続した大幅減に歯止めがかかったといえる。

 しかし、5年度ピーク時と比較すれば約9%、実数で6万4385人の減少となっている。その一方で大幅に学生数を伸ばしている分野もあり、昨年度の本欄で指摘したように専門学校の分野・学科の二極化傾向が一層鮮明になっているといえそうだ。

▼分野・学科によっては耐用年数切れ?

 詳しくは各分野の項で分析をするが、5年度ピーク時に比べて衛生、教育・社会福祉、農業、医療が大幅に学生数を伸ばした一方で、工業、商業実務・外国語が学生数を大幅に減らしている。文化・教養は横這いとなっている。

 最近では、経理・財務の社会で使われる「耐用年数」という言葉が一般の社会でもしばしば使われている。商業実務・外国語にいたっては5年度ピーク時に比べて学生数は44.5%と壊滅的な状況を呈している現状を目のあたりにすれば、専門学校でも真剣に分野・学科の「耐用年数」を考える時が来ているといえるのではないだろうか。

 下の表1は修業年限別にみた学生数を12年度と11年度とを比較したものである。修業年限2年未満で468人減少しているが、反対に2年以上では2,363人増加している。

 昨年度の解説では、やや早手回しに「修業年限の延長効果は終息したといえる状況になっている」としたが、今年度は再び修業年限2年以上が増加傾向に転じている。対前年度の2千人弱の学生数増が、入学者増による純増ではなく、修業年限延長による「期間限定」の増加に過ぎないことがわかる。

▼分野別概況

【工業】全体では長期の減少傾向が続き、今年度も対前年度比3,714人の大幅減で、ピーク時の70%を割り込み、約3分の2の規模にまで縮小している。

 この分野は、もともと「電子計算機」と「情報処理」の2系を合わせた、いわゆるコンピューター系学科の占める割合が高い。ピーク時にはこの2系だけで10万人強の学生がいたので、その増減がダイレクトに工業全体の減少となりやすい傾向にある。ピーク時比「電子計算機」59.8%、「情報処理」55.9%の規模は、工業全体の学生数を押し下げていることは事実である。しかし、他の系で今年度の数値を子細に分析すれば、犯人は必ずしもこのコンピューター系の学科だけではない、というのが今年度の新しい傾向だ。

 「土木・建築」は数年前までは比較的安定していたが、この3年間は連続して減少し、今年度も14%(3千500人強)減少している。「測量」と合わせて、約4,000人強の減少となり、この両系の悩みは深刻だ。これらいずれも国家資格関連学科であり、その意味では景気の影響を受けにくい分野であるが、昨今のゼネコン不況は一層厳しさを増し、その影響をもろに受けた感がある。

 「機械」のピーク時比25.7%も深刻で、実数で1千人割れ寸前で、独立した分類区分として扱われることさえ怪しくなっている。「電気・電子」もピーク時比で46.4%に縮小している。

 一方、唯一学生数を伸ばしているのは「自動車整備」で、対前年度比実数で618人、5年度比でも約2千人の増加となっている。

 また、「その他」も順調で、もしかしたらこの中の学科に専門学校の工業分野の期待の星があるのでは?との予感を感じさせる明るい材料である。

【農業】この分野は学生数そのものが極端に少なく、また、専門学校としては特殊な分野であることなどのために、注目されることの少なかった分野である。しかし、ここ数年、規模は小さいながらも、動物、園芸、バイオテクノロジーなどを中心に着実に学生数を伸ばしている。

 これらの学科は大学や短期大学に類似学科が少なく、また、学科・教育内容を詳しく見てみると、大学などとのバッティングを避けた絶妙の学科・教育内容となっており、今後の動向が注目される。

 主たる分類の「農業」より「その他」が圧倒的に学生数が多く、統計上の分類区分の整理統合問題は、この農業分野が一番深刻だといえる。

【医療】この分野は、学生数では専門学校全体の中で約28%のシェアを有して、分野としては最大規模を誇っている。中でも、「看護」は系として最大で、唯一10万人台を超えている巨大な系である。したがって、この「看護」の動向が、医療全体、さらには専門学校全体の動向を左右してきた。

 しかし、昨年度の2,129人という大幅な減少ではないが、今年度もわずか(0.5%、472人)ではあるが、学生数が減少している。

 本誌が再三にわたって指摘しているように、この分野は大学や短期大学の学科と正面からバッティングする初めての経験に直面している。特に、看護学校にその感が強く、専門学校としての特色を全面に打ち出し、大学や短期大学との上手な住み分けができるかどうかが、その生き残りのポイントとなろう。

 この分野は「看護」の巨大さのゆえに、他の系の影が薄いが、今年度は、「看護」以外の系に新しい動きが見られ注目される。

 とくに、東洋医学の「はり・きゅう・あんま」と「柔道整復」に注目をしたい。両者合わせて対前年度比実数で1千400人余りの学生数増となってる。なかでも、「柔道整復」は対5年度比では142.7%と大幅に規模を拡大している。

 なお、「その他」には、リハビリテーション関係の理学療法士、作業療法士などがあるが、それにしても3万6千人強は、分野第2位の巨大さで、「その他」でくくるにしては大きすぎる。

【衛生】昨年度の30.7%とまで大幅ではないが、今年度も対前年度6.5%で着実に規模を拡大している。その結果として、対5年度比では182.4%で、2倍の規模に迫る勢いである。

 その大きな原動力となっているのは「美容」で、今年度も実数で3千5000人弱の増加となっている。小さな系であれば、優に一つ分の学生数増である。修業年限延長に伴う一時的なものとの見方もあるが、必ずしもそうとばかりはいえない何かが感じられる。「美容」と比較して学生数の規模の小さい「理容」も12.9%(466人)増えている。

 過去数年大幅に学生数を伸ばしてきた「調理」は昨年度に続いて、3.2%(375人)の減少となっている。また、大学・短期大学とバッティングする分野である「栄養」は長期の減少傾向が続いている。

 この分野でも「その他」が健在で、対5年度比では266.1%と大幅に学生数を伸ばしている。なお、この「その他」に含まれる学科には、製菓、製パンなどがある。

【教育・社会福祉】この分野は3区分に分かれているが、すべての区分が対前年度比でプラスになっている。長期低落傾向を見せていた「教員」もわずか(実数で70人)ではあるがプラスに転じた。「保母」も前年度を601人上回った。

 それにしても、社会福祉・介護福祉を中心とする「その他」は大幅(3,478人)に増加している。その結果として、この分野は全体で対前年度比7.3%(4,149人)の学生数増となり、対5年度比では173.8%の規模にまで拡大している。

 昨年の本欄でも指摘したが、「その他」の伸びがこの分野の拡大の主要因であることには変わりはない。時代が求めている分野といえば格好はいいが、大学や短期大学も生き残りを求めて、この分野に進出している。医療分野同様にいかに住み分けを上手にするかが、ポイントといえよう。

 なお、先にもふれたが、この分野には3つの分類区分しかない。そのために、近年急拡大している介護福祉や社会福祉が「その他」でくくられ、全体の約74%を占める巨大な分類区分となっている。
 
【商業実務・外国語】この分野は昨年度に引き続き約10%の減少で、長期低落傾向に歯止めがかかっていない。その結果として、対5年度比では44.5%と半分以下の規模に縮小し、壊滅的な状況を呈している。

 本誌が再三にわたって指摘しているように、この分野のほとんどの学科が、大学・短期大学の学科と正面からバッテングしており、大学や短期大学の熾烈な生き残り競争の影響をもろに受けていることは事実である。しかし一方で、それだけの理由で、10年にも満たない短期間に規模を半減するものだろうか、という素朴な疑問も同時にわく。

 対5年度比「タイピスト」の1.8%は極端にしても、「商業」23.9%、「秘書」28.1%、「経営」28.1%、「経理・簿記」37.5%、と軒なみ3分の1以下の規模に縮小している。これに、「外国語」の40.3%を加えれば、8分類区分のうち実に6分類区分で半分以下ないし3分の1以下になっている。

 かろうじて50%以上(半分にはなっていない)を保っている「外国語」も59.7%、「その他」も58.3%ではいばれない。

 8分野のなかで、「その他」が対前年度割れは、農業とこの分野だけで、また、対5年度比でマイナスはこの商業実務・外国語だけである。

 工業や教育・社会福祉などの「その他」の推移で明らかなように、学科のスクラップ&ビルドが分野のなかで行われ、厳しいながらも明るい兆しを見せている分野もある。しかし、商業実務・外国語にはそれされが見られない。壊滅的状況というゆえんである。

 教育・社会福祉同様に、「その他」が異様に巨大で全体の約54%を占めている。一方で、「商業」「タイピスト」など独立の分類区分としては耐用年数のとっくに切れたものが残っている。

【服飾・家政】この分野は、昭和55年度の7万人弱をピークに、9年度まで毎年学生数を大幅に減らし続けていた。10年度になってようやく減少が止まり、この3年間はわずか(今年度は141人)ではあるが学生数が上昇している。

 しかし、統計を子細に見ると、この学生数増加は、「その他」の増加によるものであることがわかる。商業実務・外国語の項で述べたように、主力学科ではなく「その他」がリーダー的存在になっていることは、その分野のなかで学科のスクラップ&ビルドが進んでいるということであり、明るい材料といえる。

【文化・教養】この分野は、対前年比102.0%、対5年度比105.9%であり、専門学校の中にあっては比較的安定している分野といえる。

 ただし、「その他」を除いて、この分野で最大規模を誇る「デザイン」が、この2年間で約1千3百人余りを減少させており、若干気掛かりではある。

▼50分類について一考を

 以上、学校基本調査速報にもとづいて、専門学校を50分類で概観しながら、小社なりの分析を紹介してきた。それぞれの項で若干ふれたが、文部省のこの50分類が、専門学校の実態を正しく把握するのにはもはや十分なものではないということである。

 63万数千人の50分類は単純には、1分類区分あたり1万2、3千人となる。

 2千人以下の分類区分は、「機械」1,003人、「農業」474人、「准看護」195人、「商業」765人、「タイピスト」20人、「家政」418人、「家庭」37人、「料理」714人、「手芸・編物」399人、「茶華道」140人、「受験・補習」0人となる。

 一方で、教育・社会福祉「その他」44,996人、商業実務・外国語「その他」41,517人をあげるまでもなく、8分野の「その他」合計は185,825人であり、対前年度でも4千人以上増えている。これは、専門学校全体の29.2%であり、専門学校の最大学科は「その他」であるといっても過言ではない。

 連続するから統計であるという理論は正しい。しかし、時代のニーズに密接に連動している専門学校の学科分類は、一定の時間が経過すれば、古くなってしまうこともまた事実である。

 なお、専門学校の「その他」については次号以降でもう少し詳しく分析・紹介しようと思うが、「その他」のなかには専門学校の明日を担う重要学科が含まれているはずだということを力説しておきたい。(伊藤)




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