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2000年8月号

リポート 日本語学校事情 その11
 〜日本語学校のコース制について〜
 まず、肩の凝らない話から始めよう。次のページ下欄にまで続く下の資料を眺めていただきたい。(読む必要はありません)

 これは「2000 日本語教育施設要覧」に掲載されている日本語学校の設置コースを原則として五十音順に掲載しもの。(ただし、眺めやすさを優先したために、同じようなものはまとめたので、一部五十音順でないところもある) なお、「コース」を全て省略してあるので、例えば、「6ヶ月」は「6ヶ月コース」というように読み替えていただきたい。

 たかだか2百数十校の日本語学校に「よくもこんなにコースがあるもんだ」というのがまず第一の感想である。

 そして、もう一つは「それぞれの学校で、苦労し、知恵を絞っていろいろな名称のコース名を考え、使用しているがその実態になにほどの違いがあるのだろうか」というのが第ニの感想。

 しかし、この感想は感想として、これらのコース名にはそれぞれの日本語学校の教育目標が具体的に表現されている(はず)、というのも、また事実であろう。

 小論は日本語学校のコースを研究することが目的ではなく、最近話題になっている入管のコース別定員制を強く打ち出した審査方法、ある意味では唐突なこの進路変更が日本語学校にどのように影響を及ぼすのか、また、審査そのものの妥当性についても考えてみることを目的としている。

 そのために、これらのコースで日本語学校が何を目的に教育をしているのか、また、その実態はどうか、さらに、これらのコースが日本語学校の経営とどのような関係を有しているのか、などについて考えてみたい。

▼就学生の80%は日本での進学を希望

  ここに一つのアンケート調査がある。日本語教育振興協会が平成11年10月に全国の日本語学校に在籍する就学生(留学生)を対象に実施したもの。

 就学生の国籍別では、中国50.0%、韓国34.6%、台湾5.5%(合わせて、90.1%)などとなっており、日本語学校のほぼ実態に合った比率となっており、その結果はかなり信用してよいと考える。

 以下の解説では、誌面の都合でアンケート結果について詳しく紹介できないので、同協会ニュースNo.59(平成12年5月31日発行)をご覧いただきたい。

 日本語学校修了後の進路希望では、約80%が日本の高等教育機関に進学を希望し、「母国に帰る」は13.4%だけとなっている。

 一方、その就学生の母国での日本語学習歴を見てみると、6ヶ月以上の学習歴をもっている人は約70%で、これに6ヶ月未満(26.1%)を加えれば、実に96.5%の人が、母国の日本語学校(33.8%)、大学、高等学校などで日本語を学んだ経験をもっている。

 この結果から、就学生のほとんどが日本語の知識をある程度有しており、その日本語を日本国内の日本語学校で一段とブラッシュアップして、できうれば日本の大学をはじめとする各種の高等教育機関に進学したい、という大まかな就学生像が浮かび上がってくる。

▼コース名は単なる便宜置籍船

  これらの就学生の希望に日本語学校はどう応えるのか、また、実際にどう応えているのか。この点で、冒頭に述べたコースが関わってくる。

 下欄のコース名を一覧して、はっきりと違う日本語教育が日本語学校で行われているとは言い切れない。強いていえば、日本語学校業界でいわれている、「一般コース」と「進学コース」の違いが目につく程度だ。

 しかし、これは次のような理由であまり意味をなさない便宜的なものであるということがわかる。それは、A就学生のビザの最大延長可能期間は2年であること B日本語学校のコースは修業年限が1年以上でなければならないこと C日本語学校では最多で年4回の募集が行われていること D日本の教育機関の入学時期がほぼ4月で統一されていること、などの条件を満たし、それに対応したコース名の設置しか日本語学校には許されていないからである。

 したがって、4月に入学した就学生には、その終期が3月であるために、翌年と翌々年の2回、高等教育機関の受験機会があるが、それ以外の1月、7月、10月入学の就学生には翌年ないし翌々年の4月1回しか、実質的にはそのチャンスがない。逆な言い方をすれば、ビザの最長2年という規定を活用しようとすれば、これらの就学生のコースは、必然的に進学を目的にしないコースとならざるをえず、その結果として「一般コース」と称せざるを得ないということである。

 「進学コース」が進学を目的とするコースであるとすれば、その対極の名称である「一般コース」は進学を目的としないコースである、と考えるのは当然のこと。しかし、アンケート結果でも明らかなように、進学を希望しない就学生はごくわずかしかいない。ビジネスの世界でのコンシュ−マリズムを持ち出すまでもなく、コンシュ−マー(就学生)の意向を無視した企業経営(学校経営)は成り立たないことは自明のことである。

▼実態は能力別クラス制

  結論からいえば、日本語学校のコース名は便宜的なものであり、日本語学校の実態は、就学生の大多数が希望している日本の高等教育機関に進学するための日本語の準備教育機関であるということである。

 また、実際のクラス編成でも、同時期入学者が一律に1年1組に編入されるのではなく、語学教育の特殊性からその日本語の能力に応じて、2年生にも3年生にも編入されうる能力別クラス制が実際に行われていることは、コース名が単に便宜的であることを雄弁に物語っている。

 以上の理由で、コース別の入管の審査方法には何の合理性もないといわざるを得ない。また、つい1年前まで総定員に対する欠員で申請できたことを変更するのであれば、その理由を十分に説明し、必要に応じて猶予期間を設けるのが当然であろう。(鎌田)



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