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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2000年12月号

調査 専門学校の長期低落傾向に歯止めか
 平成12年度の『学校基本調査報告書』が刊行されたので、全国の専門学校(専修学校専門課程)の入学定員・入学者数・充足率の推移を、各都道府県別に過去10年間にわたって見てみたい。


▼定員減で充足率も向上

 初めに全国を概観する。専門学校の入学定員はいわゆるバブル崩壊後も連続して大幅な増加傾向にあったが、11年度には若干ではあるが初めて減少に転じ、12年度も同様の傾向が続いた。定員がピークであった一昨年度比で1.9%の減と割合では些少の減少であるが、実数では8,295人減となる。

 一方、入学者数は4年振りに増加に転じ、対前年度比で1.6%増、実数では4,903人の増加となった。これに伴って、充足率も9年振りに増加に転じ、73.2%に上昇した。

 いずれの数値も専門学校の長期低落傾向に若干ではあるが歯止めがかかったことを示しており、専門学校業界にとって久々に明るいニュースとなっている。


▼上昇傾向の都道府県数が大幅に増加

 3ページ以下に掲載した表では、都道府県別に過去10年間の入学定員、入学者数、充足率の推移とそれぞれの数値を専門学校全体で入学者数がピークであった平成4年度と比較した割合をパーセントで示した。 それぞれの都道府県欄には一口コメント風に、その趨勢を掲載し、その末尾にsqtの記号を付した。これは、それぞれの都道府県の今年度の趨勢について、sは全体的に上昇拡大傾向を、qは停滞を、また、tは下降縮小傾向を大雑把に示したものである。

 これによると、上昇傾向を示しているsは岩手など19都府県、停滞を示すqは青森など22府県、また、下降縮小傾向を示すtは6道県となっている。これを10年度、11年度前と比較すれば、sは10819へ、qは122322へ、またtは25166へと変化している。大雑把にいえば、下降縮小傾向のところが大幅に減った分、回復上昇基調に転じたところが多くなったと分析することができる。

 冒頭で述べた全国の傾向が、都道府県別に見ても同様の傾向にあることが分かる。


▼都市部と地方の二極分化の兆し

 定員は東京の112,817人をトップに以下、1万人以上のところは大阪45,858人、愛知30,257人、福岡22,136人、北海道21,381人、宮城14,812人、神奈川13,473人、兵庫11,365人、広島10,576人、新潟10,225人の10都道府県となっている。東京から広島までの順位は昨年と変わっていないが、今年度初めて新潟が1万人台の仲間入りをした。

 また、定員が2千人以下のところを少ない順に見ると、鳥取936人、和歌山1,115人、島根1,222人、山梨1,418人、滋賀1,470人、山形1,677人、徳島1,756人、福井1,772人、佐賀1,970人の9県となっている。なお、香川は再び2千人台となった。

 東京、埼玉、千葉、神奈川のいわゆる首都圏の定員は144,172人で全国の33.6%を占めている。また、入学者数は112,913人で全国の36.0%を占めている。

 入学者数は東京の88,9539人をトップに以下、1万人以上のところは大阪37,646人、愛知21,084人、福岡17,591人、北海道15,817人、宮城11,819人の順となっている。定員が1万人以上である神奈川、新潟、兵庫、広島はここではもれている。

 入学者数が2千人以下の県は、昨年度よりは3県減ったが、その数は20県にのぼり全都道府県の半数近くになっている。なかでも鳥取586人、和歌山795人、島根838人、山形928人は千人以下となっている。なお、昨年度千人以下であった滋賀は今年度は千人台を回復した。


▼充足率60%以下の要注意県は12

 充足率の推移にも注目をしたい。充足率は、3年度の89.9%がピークで、昨年度まで8年連続して減少したが、今年度は2.0ポイント向上して73.2%となった。

 充足率の最高は昨年度の東京に変わって岩手が84.8%でトップとなった。以下、高い順に、大阪82.1%、宮城79.8%、千葉79.6%、福岡79.5%、京都79.4%、東京78.8%、埼玉78.6%などとなっている。

 一方、充足率の低いところは、秋田37.5%をワーストワンとして、青森49.3%、茨城49.7%の3県が50%未満の充足率となっている。この3県の他に充足率60%以下の要注意県は9県で全国の約4分の1が要注意県となっている。

 公的補助をほとんど期待できない専門学校にあっては、学生の納める学費が唯一の収入源であり、学校経営の根幹がこの充足率にあるといっても過言ではない。充足率の推移を注意深く見守りたい。


▼上昇基調の裏の数値・傾向に注目

 本誌では平成8年度から同様の記事を毎年掲歳しているが、8年度〜12年度までの各都道府県の趨勢の推移を先ほどのsqtで年度ごとに示すと上の表のようになる。

 宮城のようにqが並んでいるところ、石川のようにtが並んでいるところなど、さまざまなパターンが見られるが、今年度はqからsに変わったところが多い。その意味では専門学校業界にとって喜ばしい兆候ではある。

 しかし、各都道府県を子細に見ると、喜んでばかりはいられない数値・傾向も多々見られる。専門学校の今後の推移を注意深く見守りたい。(鎌田)



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