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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2001年2月号

調査 平成12年度 学校基本調査報告書の分析
 〜第3分野(医療)編
 前号に引き続き、専門学校を分野別に見ていく。今回は第3分野の医療。データは、前回同様に文部省の「学校基本調査報告書」の50分類によるもので、この資料をもとに平成に入ってからの12年間の定員数・入学者数を中心にその推移を見ていきたい。


▼資格取得、需要高で順調に拡大

 第3分野(医療)の大きな特徴は、看護科を筆頭にそのほとんどの学科が国家資格関連学科であることである。そのために、専門学校全体が入学者数のピークを迎えた後も、経済不況に伴う就職難、ライセンス志向などの追風を受けて順調に入学者数を増加している学科が多い。

 医療全体の入学者数を見ても、年度によって若干の増減はあるものの、全体としてはこの12年間安定して成長しつづけている。専門学校全体が縮小を続けている中では異例の分野といえる。

 この分野は国家試験関連学科ということで、定員を入学者数が大幅に上回ることは制度上できにくい。しかし、他の多くの分野が充足率を極端に悪化させているのに反して、この分野は平成元年度以降の充足率は94.5%〜101.7%の間を上下し、他の分野には見られない高いレベルを維持している。このこともこの分野の大きな特徴といえる。この定員と入学者数の年度ごとの乖離に注目をして見てみると、10年度に約4,000人に上った定員と入学者数の乖離は、11年度は約3,200人、さらに12年度には約2,200人と小幅になっていることにも注目をしたい。


▼男子の入学者数は1,961人増 

 入学者数を男女別に見ると、特に男子の進出が大きいことがわかる。専門学校全体の入学者数のピークであった平成4年度を100として計算した対4年度比入学率を見ると、全体では24.6%の増加(実数にして1万3,556人増)であるが、男子は4年度と比較して67.9%増(同6,169人増)、女子は16.1%増(同7,387人増)であった。この両年度の男女比を見てみると、4年度では男子が全体の16.5%に対して女子は83.5%、12年度は男子が22.2%に対して女子は77.8%となっており、男子の割合は5.7ポイントも上昇している。

 以下、文部省の分類(下表の学科のコード抜粋を参照)にしたがって各分類ごとの傾向を見てみよう。


★301 「看護」

 この系は学生数では、専門学校全体の約16%(実数で101,635人)を占める巨大な系である。医療関係分野のなかでは約半分以上の割合を占めている。

 この系は専門学校全体のピークとは異なり、入学者数は8年度がピークであった。以降、10年度に若干の増加はあったものの、11年度と12年度はともに減少となっている。後に見るように、いくつかの要因をあげることができるが、順調に拡大をつづけてきた看護系は、いま大きな転機を迎えているといえそうだ。
 そんななかで、医療分野全体の動きと同様に、この系でも男子の進出が目立つ。減少に転じた9年度以降も、数は少ないものの男子の入学者は微増しつづけており、12年度の入学者数は元年度の約4倍の規模にまで拡大している。

 年度ごとの定員数と入学者数の乖離を見てみよう。看護婦(士)が「3K」の一つといわれて敬遠されていた時代であった3年度までは定員割れが見られた。その後、いわゆるバブルの崩壊による経済不況で、就職氷河期となった時代である8年度までは、おおむね定員を超えていた。医療技術の高度化、看護婦(士)の能力向上が叫ばれるようになり、大学・短期大学などでの看護系学科の新設ラッシュが始まった9年度からは、再び定員割れという推移を辿っている。

 しかし、この程度の入学者数の減少・定員割れは、近年の公立の看護系大学・短期大学の新設ラッシュを考えれば予想されたことといえる。問題は、専門学校の看護科が大学・短期大学の看護科との住み分けを見通した特色を打ち出せるかどうかにかかっているといえよう。


★302 「准看護」

 本来ならば、高等課程に属する学科であり、専門課程として設置している学校はごくわずかである。また、准看護婦(士)の養成校自体も廃止、あるいは看護科へ移行する傾向にある。そのため、独立した一つの分類として見ることは意味をなさず、「その他」に分類すべき学科といえる。


★303 「歯科衛生」

 この系は4年度の第1次ピークを迎えた後、若干の減少傾向を示し、8年度に再びピークとなった。さらに12年度に8年度並みにまで回復するというように、他の系にはあまりみられない特異な動きを見せている。しかしこれは比較的小さな増減であり、全体的に見れば、6,000台を常にキープし安定しているといえる。

 また、以前は女子のみの募集しか行わない学校がほとんどであったが、近年、共学制に変えて積極的に男子の志望者を受け入れる学校も増えてきた。全体的に見るとまだ小さな数字ではあるが、男子の入学者は12年度には80名を超えた。


★304 「歯科技工」

 7年度にピークを迎えたこの系は、8年度からは減少傾向に転じた。11年度に若干の微増はあったが、再び12年度には減少した。全体的に見ると減少傾向にあるといえ、12年度は7年度ピーク時の82%の規模に縮小している。

 入学者数3,000人規模で留まればよいが、ここ5年間のこれらの動きから推測すると、微減と微増を繰り返しながら、少しずつ規模が小さくなっていくこともなしとはしない。今後の推移を注意深く見守りたい。


★305 「臨床検査」

 医療分野のなかではめずらしく、専門学校全体と同じく4年度が入学者数のピークであった。その後は、例外的に微増することもあったが概ね縮小傾向にあり、12年度の時点でこの系の規模はピーク時に比べて、約20%縮小した。

 大学・短期大学にも類似の学科があり、この後の動向が注目される。

 一方、定員数と入学者数の関係をみると、専門学校全体では大幅な定員割れが続いているのに対して、この系は3年度以降10年間連続して定員以上の入学者を集めており、根強い人気があることがわかる。


★306 「診療放射線」

 入学者数がほぼ1,000人規模で、一つの分類として見るには規模が小さい。そのために、実数でのわずかの増減が比率で見ると敏感に変わることになる。9年度をピークに減少傾向へ転じたが、ほぼ入学者数は1,000人を維持しており、全体的には安定しているといってよい。

 男女別に入学者数を見てみると、元年度の入学者の男女比は男子9割に対して、女子は1割であった。これが、12年度では女子が2割にまで増加しており、この系への女子の進出が目立つ。

 また、「臨床検査」系と同様に、この系も4年度以降、入学者数が定員数を上回っており、根強い人気があることがわかる。


★307 「はり・きゅう・あんま」

 実数では509人とわずかであるが、比率で見ると対前年度比130.6%の大幅な入学者増となった。これは、12年度にこの系の学科が数多く新設されたことによるもので、しばらくは、新設による定員増と入学者増の両面での拡大が続くものと予想される。今のところ定員と入学者数はバランスがとれているが、今後もこのバランスを維持した拡大となるかどうか、注目される。


★308 「柔道整復」

 前項の「はり・きゅう・あんま」と同様に、入学者数は実数では690人増とわずかではあるが、比率では対前度比で159.0%と大幅に増加している。これは、主に新設校(学科)が多かったことに伴うもので、今後の動向が注目される。

 また、この系はこの13年間は入学定員を常に上回る入学者数を集めており、根強いニーズがあることがわかる。 

 この系は、「はり・きゅう・あんま」同様に、大学や短期大学に類似の学科がなく、専門学校らしい学科群といえる。


★309 「その他」

 「その他」のなかにある医学技術には、理学療法、作業療法などの人気学科に加えて、言語聴覚、視能訓練、義肢装具などの国家資格関連の学科が含まれている。

 この系は、5年度に一度入学者数が減少したが、全体的には順調に拡大を続けている。12年度には、専門学校全体のピークであった4年度の2倍以上の入学者が集まる勢いを見せている。一時のピークは超えたものの理学療法、作業療法の学科を新設する専門学校はまだあり、この系は今後も堅調な動きをみせるものと思われる。

 ただし、この系の学科は大学や短期大学に類似の学科があること、6年度を除いて定員割れの状態が続いていることなど、問題がないことはない。


▼国家資格だけでない魅力を

 医療分野全体の動向に大きな影響を及ぼす「看護」は、大学・短期大学に次々に看護系学科が新設され始めたのとほぼ同じ時期に入学者数のピークを迎え、規模を縮小し始めた。しかし、大学・短期大学の看護系学科の新設ラッシュもようやく落ち着きを見せ始めており、専門学校の「看護」系学科にしてみれば、これからが腕の見せどころといえそうだ。

 これは「看護」だけの問題ではなく、すでに医療系短期大学に同種の学科が設置されている「歯科技工」「臨床検査」、12年度に再び増加に転じた「歯科衛生」や、「その他」に含まれる理学療法や作業療法についても同様なことがいえる。

 大学や・短期大学では、少子・高齢化社会に対応すべく、あるいはより高度な医療技術に順応できる高い技術・知識を持つ新しいメディカルスタッフの育成に力を注いでいる。したがって、どう「専門学校らしさ」を盛り込むのかが今、問われているといえよう。

 最近、医療現場で働くスタッフによる事件、事故が数多く発生し話題となっている。これらは技術的な単純ミスだけではなく、そのミスにいたる業務管理の問題でもある。また、これらは責任感の問題でもあるといわれる。「学問」を追究する大学・短期大学ではできない、実践に裏打ちされた「責任感」など、専門学校ならではの教育が求められているとはいえないだろうか。

 もはや国家資格だけを特色に掲げた学科に魅力はない。資格は当たり前、それにプラスした「何か」が問われている。専門学校らしい特色を打ち出した実践教育こそが求められている。(伊藤)




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