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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2001年2月号

コラム 専門学校と留学生の就職
 わが国の専門学校への留学生数は平成2年度の12,574人をピークに、以降10年度の5,656人まで下降を続けた。11年度からは一転して上昇に転じ、12年度は8,781人とピーク時の約70%の規模にまで回復している。この増加傾向は、日本語学校の動向等を考慮すれば、まだ当分の間は続きそうである。

 これら専門学校留学生は、卒業後にはわが国の国内で一般企業に就職をすることができる。これは、平成9年の入管法の改正によるもので、次のような条件を満たしていればよいことになっている。

 A「専門士」の称号を得て専門学校を卒業すること
 B企業における業務内容が専門学校の学修内容と関連していること

 長引く経済不況下にあって、専門学校全体の就職率は低下しているが、留学生の就職はどうなっているのか、その実態についてリポートする。


▼留学生の就職にはいくつかの障壁が

 入管法の改正後に専門学校に入学した留学生は今年3月に卒業する。したがって、専門学校留学生のわが国の企業への就職は実質的には今春が初めてといってもよい。その意味では留学生の就職は緒についたばかりといえ、企業・専門学校ともに若干のとまどいがある。しかし、留学生の関心は高く、また、実際に就職を希望する留学生も多いという。

 就職先をこの時期に既に決めている留学生の特徴を各専門学校の担当者に聞くと、「留学生は日本人学生と違って、早い時期から就職活動に取り組み、まじめで、目的意識も高い」と、一様に声を揃える。 

 しかし一方で、日本での就職を希望して就職活動を始めても、実際の就職活動での厳しさから日本での就職をあきらめて帰国に切り替える留学生も少なくないという。

 長期化している経済不況下、求人自体が少ないこと、また、「企業が留学生の採用に対してかなりシビアな目でみている」など、留学生は厳しい状況に直面している。業種や職種によって異なるものの、制度自体が新しいこともあり「企業には、留学生を採用するという認識があまりない」と語る専門学校就職担当者もいる。

 また、留学生の場合、日本人学生と違って一生同じ企業で働こうとする学生は少なく、3、4年勤めて実践的な技術を身につけたら、母国へ帰ってその分野の企業に再就職したり、自分で事業を始める人が多いともいう。企業にしてみれば、「せっかく仕事を教え込んでも、留学生は国に帰ってしまうから」という思いが強く、採用に関しては慎重にならざるを得ない面もあるようだ。これもまた企業が留学生を採用する際のネックの一つといえる。


▼職種・待遇は日本人とほぼ同じ

 留学生に対する就職指導は、日本人学生同様、各校とも就職関連のセクションが行っている。したがって、就職を希望する留学生は掲示された求人票を見て、志望企業の採用試験を受けるということになる。専門学校では面接指導などの就職活動支援も、日本人学生と同様に指導にあたっているのが現状だ。

 日本人学生に比べて留学生に対しては閉鎖的な企業も多い反面、留学生を募集する企業の職種、待遇などは、日本人学生と同様で、留学生に対して特別な条件をつけることはほとんどないという。

 また、求人票には表れてこないものの、特定の国の留学生が採用されやすかったり、不採用にされやすいということもあるようだ。たとえば、その国への進出などを考えている企業や、すでにその国の企業との取引を持つ企業などの場合は、国籍が特定される場合が多いという。

 工業関連分野の学科を数多く持つ日本電子専門学校の担当者によると、韓国に日本のゲーム、雑誌、音楽などが大量に流入している状況を反映して、例えば「韓国でも売れるモノを作りたい」という企業が、韓国人の留学生を採用するケースがあるという。

 「企業も『戦力重視』という厳しい態度で採用を行っているため、そういう事情が絡んでくると、なかなか採用されない国の学生もいます。韓国の例のように、うまく社会の流れに乗れればよいのですが……」とも語っている。


▼日本人学生とは一味違った指導方法

 留学生を受け入れている専門学校では、学校が指定する求人申し込み用紙に、留学生採用の可否欄を設けている。したがって、留学生が応募するのは、「留学生の採用可」と記入してくる企業ということになる。制度が定着していないせいか、「留学生可」と書いてくる企業は、まだ求人の一部にとどまっているのが現状だという。

 韓国からの留学生が大部分を占める東放学園専門学校では、「就職を希望する留学生と就職担当者が電話をはさんで、応募したい企業に電話し、留学生の良さを直接アピールする」というような方法で就職支援を行っているという。

 「まだまだ企業の留学生に対する認識は低く、企業から留学生がほしいという求人はほとんどありません。学校から積極的に『留学生の良さ』をアピールして、留学生の求人を積極的に引き出していきたい」と同校就職担当者は語っている。

 同校では、留学生が卒業後、わが国で就職ができるようになった9年度から、積極的に企業に留学生のPRをしているが、その際に、「韓国の留学生は『兵役経験があり忍耐力・体力がある』、『目的意識が高い』、『豊かで円満な家庭に育っている』、『儒教の心を持っている』という4つのアピールポイントを掲げて、企業に韓国人留学生の良さを理解してもらうように努めている」という。

 一方で、留学生だけに力を入れられない現実もある。就職が厳しいのは留学生だけでなく、学内の在籍者のほとんどを占める日本人学生も同じなのである。

 千代田工科芸術専門学校では、現在は日本人学生と同様の体制で就職指導を行っているが、「今後、留学生の人数が増え、また日本での就職希望者が増えるならば、学校としても、専門の担当者をつけるなど、留学生向けの支援策を、もっと真剣に考えなければならないだろう」と語っている。同校では、今のところ、数は少ないが意欲的に就職活動に取り組む留学生は、積極的に就職相談に来ているという。


▼就職が学校の人気、質を高める

 早い時期から積極的に就職活動をしている目的意識の高い留学生ほど、内定を早く決めている。専門学校が職業教育を目的としている以上、留学生にも同様に専門技術が求められる。就職が決まる留学生は、就職活動だけに一生懸命になるわけではなく、学習態度が真面目で、さらに企業に自分を積極的にPRできる優秀な学生だという。

 留学生にかぎることではないが、将来、就職しようとして専門学校へ入学する場合、入学理由に専門技術取得をあげる受験生は多い。さらに多くの専門学校の中からどの学校を選ぶのか、ということになると「就職率の高い学校、希望する仕事に就ける学校」となるのは当然のことである。

 留学生の場合でも、学校の出口である就職支援をしっかりすることによって、入口での優秀な留学生が確保できる。もちろん、そうして入学した留学生は、在学中もまじめに取り組むだろうし、就職に対しても積極的なはずだ。

 日本電子専門学校の留学生担当者は、厳しい現状のなかでも同校の留学生が高い就職率を維持しているのは、「入学の段階で日本人学生と同じように授業を受けられる能力を持った優秀な学生を見極めるようにしています。それが結果としては高い就職率にもつながっている」と語っているのはもっともなことである。

 留学生の数の確保ということで、学費を大幅に割り引く留学生特典を設定している専門学校は多い。数だけでよしとするならば、これも一法ではあろう。しかし、このことが将来ともに安定した留学生の確保とは必ずしもなりえないことは明らかである。

 専門学校教育は2年間という短い修業期間である。実践的かつ効果的な教育を行い、学生の希望どおりの進路をバックアップする、これが理想である。そのためには、入口で優秀な人材を確保することが、まず最優先されなければならない。

 対留学生対策も、結局は日本人学生と同様のものにならざるをえない、という当然の結論になりそうである。(伊藤)



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