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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2001年2月号

調査日本語学校事情 その15
 〜入管法と日本語学校〜
 平成12年11月現在で35,000人余の海外からの語学留学生がわが国の日本語学校で学んでいる(弊社調べ)。これらの学生は、日本語学校での学習修了後に、さらにわが国の高等教育機関で学ぶために、ほぼ全員が18歳以上であり、かつ母国において後期中等教育以上の学習修了者である。中には、母国で大学・大学院等の高等教育機関を既に修了した者も多く含まれている。

 しかしながら、下欄の関係法令で明らかなように、これらの学生はわが国の査証では、高等学校等で学んでいる海外からの生徒と同様に「就学生」と呼ばれ、大学や専門学校の「留学生」とは区別されている。また、同じ日本語学校であっても、専門学校の日本語科、大学等の日本語別科、さらには準備教育機関である一部の日本語学校等の学生は「留学生」として扱われており、非常にわかりづらい制度となっている。

 また、「就学」という言葉は、「就学義務」「就学児童」「就学率」などに見られるように、本来、初等教育レベルにおける教育専門用語であるために、一般社会においてはなじみがなく、「就学生」と「留学生」の区別があいまいなまま一般的には「留学生」として一括して認識されているのが現状である。 この国内の混乱が海外にも伝播し、「留学生」の査証の出る学校が良い学校で、「就学生」の査証の出る学校は悪い学校である、とさえいわれ、日本語学校間における公正な募集活動に大きな障壁となっており、一部では混乱さえ見られるのが現状である。

 また、これらの要因が複合して、「就学生」のわが国における社会的評価は低く、そのために、「就学生」が安心して、かつプライドを持って日本語を学ぶ環境にはほど遠い状況にある。

 わが国は、今まさにその国際化が問われておいる。そして、その国際化は内からの国際化と外からの国際化といいう両側面からのアプローチが必要である。これら海外からの語学留学生は、わが国の外からの国際化を担う貴重な人材である。

 かつて、中国からの留学生であった故孫平化先生は、東京工業大学在学中に反日運動に身を投じたと、自伝の中で述べている。先生のほかにも多くの留学生が反日となって帰国したことは日本にとって不幸なことであるとも述べている。

 孫先生の指摘を待つまでもなく、私たちは、過去を真摯に反省し、二度と同じ過ちを繰り返してはならない。「就学」と「留学」の区別は、入国管理という観点からのみの恣意的な区別であり、なんら益のないものであるといわざるをえない。ほとんど無意味とも思える「就学」と「留学」の区別は、単に区別にとどまらず差別となって大きな弊害をもたらしているこの現状は早急に改善する必要があると考える。

 そこで、今回は「留学」ビザと「就学」ビザについて、その関連法令を中心に見てみたい。

 根拠法令はいうまでもなく、「入国管理及び難民認定法」(いわゆる入管法)である。この法律が基になって、前ページ下欄のような法律、法務省令、法務省告示などが関連法令としてある。(欄の中の法令の後に便宜的に*1〜*4の番号を付けた。また、一部アンダーラインを付した)

 *2の留学の項のアンダーラインを素直に読んでほしい。日本語学校がどうしてこの規定に当てはまらないのか。冒頭に述べたように日本語学校で学んでいるほとんどの学生は18歳以上で後期中等教育修了(いわゆる12卒)の条件を満たし、かつ修了後はわが国の大学等への進学を希望している。

 わざわざ、就学の項のアンダーラインで日本語学校という表示すらなしに、日本語学校をここに当てはめている、ないしは、当てはめなければならない理由が分からない。素直に字面だけを読めば、留学のアンダーラインに当然日本語学校が含まれ、その結果として日本語学校の学生は「留学」ビザが適用されることになるはずである。

 *3と*4は関連する条文が長すぎるので、法令の名称のみをあげたが、この二つの法令では上記の留学や就学の部分について詳細に定められている。

 上記のアンダーラインの部分に注目をして見てみると、*3の留学で注目されるのは、三で大学等の研究生、聴講生は週10時間以上の授業を受ければよいこと、五ではもっぱら外国人を対象とする専門学校は日本語教育施設として大臣告示によること、六では先の留学の項のアンダーラインの部分が規定されていることなどである。

 同じく、就学の項では、五で日本語学校について規定されている。

 これらを踏まえて、*4では別表第一で専門学校の正規の課程としての日本語科、別表第二で日本語学校、別表第三と第四で準備教育機関がそれぞれ定められている。

 結論として、冒頭で述べたように、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校は「留学」ビザで、日本語学校は、各種学校や高等学校と同様に「就学」ビザとなる。ここで終われば、それはそれなりに整合性がなくもない。しかし、これに、いわゆる11卒を対象とした日本語学校の準備教育機関が、その境界を超えて「留学」ビザになってしまうから話が混乱してくる。

 学習奨励金はいうに及ばず、内外学生センターの宿舎・アルバイト支援事業など、あらゆる面で、この「留学」と「就学」の区別が付いて回る。この区別(差別?)にどれほどの必然性があろうか。(鎌田)

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