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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2001年3月号

調査 日本語学校事情 その16
 〜13年度入試と日本語学校〜

  2月19日:一橋大学(一次)
  3月6日:埼玉大学、東京学芸大学 
  3月7日:東京農工大学
  3月8日:筑波大学、群馬大学、千葉大学
  3月9日:東京工業大学、一橋大学(二次)
  3月10日:御茶の水女子大学
  3月16日:東京外国語大学(日本語)
  3月23日:東京大学、東京外国語大学(日本語以外の学科)


 上記の日程は、東京ならびにその近郊にある国立大学(一部の大学のみ)の13年度留学生入試の合格発表日である。一橋大学の一次を例外とすれば、3月6日〜23日のほぼ2週間に集中している。

 各国立大学の13年度入試の結果についての詳細は未発表であるが、今春は例年をはるかに上回る留学生が受験したといわれている。これは、弊社調べで、12年度の就学生数が前年度の約1万人増であることを考えれば、当然の増加ともいえる。

 ところで、この留学生の国立大学指向は、日本語学校就学生の置かれた厳しい環境の裏返しともいえなくもない。通学定期券に学割は使えない、学費は消費税免除の対象外、奨学金の類いは一切なし、未整備な学寮、アルバイトの厳しい時間制限などなどで、就学生は、「ないない、ダメダメ」尽くしの生活環境に置かれている。


▼国立大学は、ただで勉強できる!?

 一方、国立大学はといえば、初年度納入金77万3800円(一部の優秀な学生を対象とした全額免除の他に、半額免除の特典があり、これはほぼ申請者全員に認められる)である。また、学寮は月額800円と信じられないくらい安いところもある。これに月額2万円を追加すれば、2食付きになるという。さらに、学習奨励金という返済不要の奨学金があり、これは月額5万2000円で、これも国立大学の留学生は、申請すればほぼ全員がもらえる。

 つまり、国立大学の留学生は授業料の半額免除を申請すれば、年間約64万円で学費と学寮での2食付きが賄えることになり、この金額は年間の奨学金にほぼ等しい。いわば、ただで勉強し生活をすることができるということになる。

 アルバイトについて見ても、就学生との差別ははなはだしい。学期中にアルバイトができる時間数に留学生と就学生では差があるばかりではなく、留学生の場合、長期休暇中はほぼ無制限にアルバイトができることになっている。

 したがって、日本語学校では、「日本語学校での君たちの生活が苦しいことは十分わかる。だから、一生懸命勉強して、国立大学に進学しなさい。入学すれば、こんなにバラ色の生活が待っているよ」と指導をするという。結果として、就学生は国立大学へ大挙して志願となるわけで、この傾向は当分の間続くと見なければならない。


▼不合格。だけど、行き先が無い!

 そこで新たな問題が発生する。志願者全員が国立大学に入学できれば問題は無いが、留学生枠はいずれの国立大学も若干名とわずかである。受験者が多くなればなるほど、当然のことにであるが、不合格者が大挙して生まれることになる。そして、毎年4月1回限りの募集が常態となっているわが国の教育制度上、これらの就学生は不合格となった時には、受け入れてくれる大学・専門学校は募集締切後で、行き先が全く無いという非常事態に直面することになる。

 実際問題として、多くの日本語学校関係者は、今年ほど進学指導に苦労したことはないという。昨年あたりまでは、国立大学不合格者の数が少なかったこと、また、国立大学の合否発表後でも、一部の私立大学や専門学校では留学生を受け入れる余力があったので、なんとか頼み込んで受け入れてもらうことができた。しかし、これらの私立大学、専門学校にも今年度はかなりの志願者が集まり、早いところでは、昨年末には留学生枠が一杯になってしまい、これら国立大学不合格者を受け入れる余力は今年は皆無に近かったという。

 ところで、一部に「ビザ専」といわれる専門学校がある。上品な呼び方ではないが、「来る者拒まず」の専門学校を総称して一般にはそう呼んでいる。留学生(厳密には就学生)の「駆け込み寺」的な役割をこれらの専門学校は果たしており、クッションとしてそれなりに有効な存在でもある。しかし、これらの専門学校にも最近は異変が見られるようになっている。

▼専門学校の入学審査も一転して厳しく

 入管では、いわゆる「5%条項」というものがある。不法滞在者が全留学生(就学生)に占める割合が5%を境に、適正校と非適正校に分けられ、これをもとに発行されるビザの有効期限が、専門学校の場合、適正校は2年で非適正校は1年となる。同様に、日本語学校の場合は、適正校は1年で非適正校は6ヶ月となる。適正・非適正の区別はこれだけではない。入管に提出する書類(の量)が違うだけではなく、在留資格認定証明書(これに基づいて、在外公館がビザを発行する)の発給率が非適正校は極端に悪くなる。

 現在、専門学校で約半分、日本語学校では約3分の1が非適正校であるといわれる。数からいえば、非適正校は専門学校の方がはるかに多い。従来、不法滞在者は日本語学校で多く発生したといわれ、そのために、日本語学校の認定書の発行率を極端に抑えられた時期があった。

 日本語学校にとって、この認定書の発給率は学生数に直結するために死活問題である。そのために、入学審査を厳しくし、学生指導などを徹底する、という日本語学校の長年の努力が実り、現在では、全国平均で日本語学校の不法滞在発生率は3%台にまで好転している(ピーク時には9%を超えていた)。

 一方、専門学校は日本語学校に遅れて留学生問題に取り組んだこともあり、この不法滞在が問題にされることは従来はあまりなかった。しかし、近年、専門学校の留学生数の増加、それに伴って、一部ではあるが、既に述べたように、「ビザ専」といわれる学校などを中心に、余りにも多くの留学生を集める専門学校が続出し、その結果として不法滞在の温床ともなっている、という状況を呈している。

 入管も専門学校に対して厳しい指導を始め、今春数校の専門学校にはビザを出さない、という強権
行使となった。うわさがうわさを呼び、各専門学校は一斉に厳しい姿勢で留学生に臨むことになり、結果として、専門学校の門は狭くなった。

 日本語学校の先生によれば、今春、多くの専門学校から日本語学校の出席証明の提出を求められたという。日本語学校関係者の集まりで、入管の担当者は大学・専門学校への留学ビザ切り替え時には日本語学校の出席証明は必要としない、と再三にわたって説明をしているにもかかわらずである。

 これは、専門学校の一種の自衛手段ともいえる。数だけを確保すればよいという発想から、質重視への転換である。質の悪い留学生を大量に受け入れることは、自分で自分の首を絞めることになるという単純明快なことに専門学校はようやく気がついた。そのためには、日本語学校在籍時の出席状況を見ることが一番というわけである。入管の指導とは別に、専門学校ばかりではなく、この動きは大学にも波及しそうである。


▼日本語学校の進学指導にも新しい工夫が

 今春の入試について、もう一度例年とは異なった点を整理して見よう。

 @全体に締切が早くなった。特に「ビザ専」などといわれるような、従来大量に留学生を受け入れていた専門学校や学費の安い専門学校にこの傾向が強い。

 A国立大学や一部著名私立大学に志願者が大挙して押しかけた。結果として、大量の不合格者が生まれた。

 B日本語学校の出席証明を求めるなど、一段と厳しい入学審査となった。

 日本語学校としては、これらの動きに対応した指導態勢を早急に構築しなければならない。専門学校ならいつでも入れる、などという指導はもはや通じないことは明らかだ。また、従来は受験料の負担増を避けるということもあり、国立大学などは1校しか受験しないのがふつうであったし、それで十分でもあったが、今後はどううか。日本人の高校生同様に、挑戦、本命、スベリ止めの3校ぐらいの受験は必要になるかもしれない。それほど、国立大学をはじめ著名私立大学の留学生入試は厳しくなっているのだ。

 また、出席管理についても、もう一層の徹底が必要であろう。欧米の高等教育機関と違って、留学生の受け入れは、日本の場合海外からの直接ルートよりは、日本語学校ルートが主流である。その場合、入管がなんといおうが、日本語学校での成績や出席状況を選考の参考にした方が良いのは自明のことであるからである。

 徹底した進学指導なくして不法滞在の撲滅はありえない、という単純な結論になりそうである。(鎌田)


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