調査 |
平成12年度 学校基本調査報告書の分析
〜第5分野(教育・社会福祉)編 |
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福祉系学科を中心に12年度も拡大続き対前年度比9.7%(2,694人)の増加
専門学校を分野別にみるシリーズ、今回は第5分野(教育・社会福祉)を見ていく。使用する資料は文部省の『学校基本調査報告書』の50分類で、平成に入ってから12年間の入学定員数、入学者数を中心に見てみたい。
▼少子・高齢化社会に突入で急成長
第5分野(教育・社会福祉)は、囲みのように、「保母養成」「教員養成」「その他」に分類されている。かつては「その他」がその意味のとおり小規模であった。しかし、近年この「その他」が、他を圧倒する勢いで拡大し、12年度には「保母養成」「教員養成」2系の入学者数の約3倍に迫るまで巨大化している。なかでも、近年続いた社会福祉や、コード表には例示されていない介護福祉などの学科の新設ラッシュは大きい。
分野全体を見てみると、入学定員は平成元年度の約2.7倍(元年度12,294人→12年度32,635人)、入学者数は約2.6倍(元年度11,550人→12年度30,477人)となっており、この勢いはまだしばらく続きそうである。ただし、この増加は「その他」の増加で、それぞれのピーク時比で、「保母養成」は94.5%、「教員養成」は64.5%に入学者数は減少していることに注意する必要がある。
また、入学者数の男女比率を見ると、元年度は男子16.9%、女子83.1%であったのに対して、12年度には男子34.8%、女子65.2%となり、男子の比率は17.9ポイントのアップとなった。入学者数では、元年度の約5.4倍に膨れ上がっており、この分野への男子の進出が進んでいることが分かる。
以下、文部省の分類にしたがって、各系統別に入学定員数、入学者数の動向を見てみよう。
★501 保母養成
「保母養成」は、2年度以降、11年連続で入学者数が入学定員を上回っており、根強い人気を誇っている。
入学者数の推移を見ると、6年度までは順調に拡大傾向にあり、8年度を例外として、以降10年度まで縮小傾向に転じた。しかし、一転して11年度には増加に転じ、その勢いは12年度にも引き継がれ、6年度ピーク時には及ばないものの7年度のレベルにまで回復している。また、12年度には、前年度比が定員数が210人の増員だったのに対し、入学者数は628人増となった。
男子の進出も大きい。入学者数の男子の比率を見ると、元年度はわずか5.5%であったが、12年度になると14.8%と男子の比率が大幅に高くなっている。実人数にして228人→816人と規模は小さいものの、約3.6倍という大幅な増加となった。
「保母養成」では、保育士資格が取得できる。9年度、10年度の入学者数の減少は出生率低下の影響によるものと思われる。対象となる子供が減れば、当然のことながら需要に影響を及ぼすというわけだ。
ところが、11年度以降は再び増加傾向に転じている。これは、女性の社会進出によって、託児所などの整備が一層図られるようになったための新しい需要の創出によるものと思われる。
また、児童や幼児を対象とした福祉施設の整備も進んでおり、福祉分野の知識を持つ保育士の需要も高まっている。同種の学科が大学・短期大学にもある中での再びの拡大は、健闘しているといえる。今後の動向に期待したい。
★502 教員養成
ピークとなった3年度は、入学者数3,400人にまで達したが、以降は3,000人に届くことはなく、1,700人〜2,300人の間で増減を繰り返している。12年度の入学者数をピーク時の3年度と比較すると、35.5%減となっており、全体としては減少傾向にあるといえる。
この系統は、幼稚園教諭資格が取得できる(一部に保育士資格が同時に取得できるものもある)が、少子化が減少傾向の大きな要因となっている。また、現在は落ち着いているものの、一時期は短期大学への移行も続出し、これらの学科と競合していることも縮小の要因とみられる。
ただし、12年度に入学定員数が前年に比べて減少しているにもかかわらず、入学者数は前年度比13%増(実数にして265人)となっており、今後の動きが注目される。
★590 その他
第5分野の約7割を占める「その他」は、今やこの分野全体を支えているといっても過言ではない。この「その他」は、4年度と比較して入学者数が約2.8倍と大きく規模を拡大している。冒頭で述べたように、この系のなかには、ここ数年で急激に増えた、介護福祉、社会福祉など、福祉系学科が多く含まれている。高齢化社会に伴う各種社会福祉制度の整備を追い風に、ますます拡大しそうな勢いである。
他の系同様に、この「その他」でも男子の進出は年々進んでいる。元年度の男子の比率は30.4%であったが、12年度には40.9%(実数にして7,960人の増加)となっており、男子の入学者が急激に増えていることが分かる。
入学者数は順調に増えているが、気になるのは充足率である。5年度から8年度までは100%以上の充足率を誇っていたが、以降は定員割れとなっている。ここ4年間の推移を見ると入学者数とパラレルに充足率が上下している。10年度は85.0%まで落ち込んだものの12年度には90.2%に回復しているが、充足率に関しては予断を許さない状況にある。
社会全体が経済不況に追い込まれているなか、介護保険法が開始された福祉分野の需要は高い。ただ忘れてはいけないのは、この分野の学科は、大学や短期大学でも新設されており、これらの学科と競合状態にあるということである。
▼大学・短大との競合をどう乗り越えるか
この分野は社会の流れに乗って、現在も規模を拡大し続けている。特に福祉関連の専門職の社会の需要は高く、入学者数も今のところは順調に伸びている。しかし、分野全体の充足率を見ると、3年度から8年度までは101.9%〜119.8%という高い充足率を維持していたが、9年度以降は入学者数が増えているものの充足率は88.6%〜93.4%にとどまっている。このギャップは、何を意味するのか、もう一度冷静に判断する必要がありそうだ。
先に述べたように大学や短期大学でも、専門学校と同じように、近年、この分野の学科がたくさん新設されている。今までも他分野の多くの学科がそうだったように、大学・短期大学との正面での競合では、専門学校はかつて一度も勝利したことはない、という歴史から何を学ぶのか、今まさに、この分野の専門学校の真価が問われているといえる。(伊藤)
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