調査 |
平成12年度 学校基本調査報告書の分析
〜第2分野(農業)編 |
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小規模だが増減小さく安定、6年度以降入学者数は約1,500人で安定
引き続いて、第2分野(農業)ついても同様に見てみたい。使用する資料は文部省の『学校基本調査報告書』の50分類で、平成に入ってから12年間の入学定員数、入学者数を中心に分析をする。
▼女子の進出が目立つ
第2分野(農業)は、専門学校8分野のなかで最も規模が小さい。過去12年間で最も入学者数が多かったのが、11年度の1,733人である。これは、8分野のなかで最も規模が大きい第3分野(医療)と比較すると、50分の1という小規模の分野である。特殊で重要な産業分野といってしまえばそれまでであるが、専門学校の中にあって独立した分野に分類することは、ほぼナンセンスであるといえる。
この分野の入学者数の推移を見ると、4年度以降も順調に規模を拡大してはいるものの、8年度以降は1,400人〜1,700人の間で増減を繰り返しており、極端な増加や減少はない。
男女比を見ると、元年度は圧倒的に男子の方が多かった(85.9%) が、3年度以降ジワリジワリと女子が増え始め、11年度にはついに女子が男子の人数を上回った。以前では、農業分野は男子学生が多い分野というイメージであったが、特に「その他」での女子の進出が目立ち、男子中心の分野というイメージはもはや崩れている。
この女子の進出は、造園、園芸、フラワー、バイオなどの学科で多く見られ、これらの学科は数は少ないものの、各地で新設されている。
以下、文部省の分類にしたがって、それぞれの傾向を見てみよう。
★201 農業
12年間で最も人数が多かったのは6年度で、初めて300人を突破した。しかし、以降は増減を繰り返しながら縮小傾向にある。ただし、12年間の動きを見てみると、この「農業」の規模はだいたい200人〜230人の間で安定しているといえそうだ。
「農業」では、農業従事者の養成が大きな教育目標であるが、他分野の多くの学科の卒業生とは異なり、これらの学科の学生は、卒業後の就職を必ずしも前提とはせず、家業を継ぐために学ぶ人が多いという特徴がある。
現在、国外からは大量に安い農作物が輸入されている。そのために、国内農家は今まで以上の厳しい価格競争に直面している。農業のおかれたこれらの厳しい環境に、専門学校の「農業」もまた直面しているともいえる。
なお、一部ではあるが、海外での農業の指導者を育成する専門学校もあり、着実な成果を上げている。したがって、この「農業」は全体的に見れば、入学者数が極端に減少することは考えにくい。今後の推移を慎重に見守りたい。
★209 その他
7年度までは拡大傾向にあったが、以降は増減を繰り返している。11年度には過去12年間で最も多い1,524人となったが、12年度に再び減少している。また、元年度の女子の比率は16.3%であったが、11年度には54.7%となり男子をついに上回った。
近年、ガーデニングやフラワーアレンジメントが流行し、これらに関連する学科がいくつか新設された。また環境問題やバイオ関連の学科なども誕生しており、新しい動きが見られる。しかし、注意しなければならないのは、流行や斬新さだけで学科を新設しても、地についた教育内容でなければ長続きはしないということである。他と比較しても極端に少ない学科数の割には、この「その他」に学科の改廃が多く見られるのは気掛かりである。
▼大学との競合に勝ち残れるか
分野全体で、11年度には96.5%という高い充足率を達成しながら、12年度には72.2%にまで落ち込んだ。いくつかの要因が考えられるが、教育内容が高度になればなるほど、この分野の学科は大学との競合に直面するという宿命的な性質がある。
自営業の後継者や独立を考えている学生も多いこの分野では、特に即戦力となる人材の育成が求められている。専門学校は「職業教育」を行う教育機関であるということをもう一度肝に命じたい。(伊藤)
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