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2001年5月号

コラム 平成12年度 学校基本調査報告書に見る専門学校の盛衰  第6分野(商業実務・外国語)

 8年連続の入学者減、縮小傾向変わらず対前年度比7.1%、実数で3,074人減少

 前号に引き続き、専門学校を分野別に見ていく。今回は第6分野の商業実務・外国語。データは「学校基本調査報告書」の50分類によるもので、この資料をもとに平成に入ってからの12年間の定員数・入学者数を中心に、その推移を見てみたい。


▼全体の規模はピーク時の42.5%に縮小

 学校基本調査報告書の専修学校の学科コードでは、第6分野は「商業実務」のみとなっているが、小社では専門学校の実態にそった分類をするために、第6分野の「商業実務」に加えて、第8分野の「外国語」「通訳・ガイド」を統合して、「商業実務・外国語」としている。

 文部省の分野区分では、外国語=外国語文学、という捕え方で、そのために外国語関連の学科は第8分野に区分されている。しかし、下記のコード表をご覧いただくとわかるように、第8分野の「外国語」や「通訳・ガイド」には、スチュワーデス、英文秘書など、第6分野と同一ないしは類似の学科が例示されている。これらは第8分野として考えるよりは第6分野の学科として考えた方が分かりやすい、というのが「商業実務・外国語」とする理由である。

 この分野全体の入学者数の推移を見てみると、ピークは4年度の95,276人で、以降、12年度まで連続して減少している。しかも、入学者数の減少はかなり大幅で、6年度には前年度比12,279人減、7年度には前年度比10,878人減と1万人を超える規模で減少した年度もあった。しかし、10年度以降は、4,424人減(10年度→11年度)、3,074人減(11年度→12年度)となっており、減少幅は小幅になりつつある。今後の動向を慎重に見守りたい。

 なお、この分野は〈外国語〉をキーに、大きく分類すると分かりやすい。例えば、「商業」「経理・簿記」「経営」は〈外国語〉を、比較の問題であるが、必要としない学科群であり、一方、「秘書」「外国語」「通訳・ガイド」は〈外国語〉を必要とする学科群といえる。

 この〈外国語〉は、社会の動向と密接に関係してその影響を受けやすいこと、また、大学・短期大学とのバッティングの問題など、を考えるキーになる。

 以下、入学定員数、入学者数の推移を中心に各系別に見ていきたい。


★601 商業

 4ページ下欄のコード表で分かるように、この系に含まれる学科は、専門学校の学科としては、やや異質である。学科の教育目的・内容も漠然としていて、大学や短期大学の商学部との違いも判然としない。

 もともと規模の小さい系で、入学者数のピークとなった4年度に1,700人を超えたものの、以降は分野全体の傾向と同様に大幅な減少傾向にある。現在では、入学者数が371人とピーク時の21.4%にとどまっている。 「タイピスト」同様に、1つの独立した系として分類するにはあまりにも規模が小さすぎる。

 この系の学科は同種の学部・学科が大学や短期大学に存在し、大学や短期大学のこれらの学科でも人気が低迷しており、専門学校独自の特色を協力に打ち出さなければ、減少傾向は今後も続くことは必至。


★602 経理・簿記

 「その他」を除けば、分野のなかで最大規模を誇るが、入学者の動向は分野全体と同様で大幅な減少傾向にある。分野の中にあって最大規模の系は、その分野の顔ともいえるのだが、12年度には対4年度比28.1%という壊滅的な規模にまで縮小し、分野全体の推移を象徴している。

 企業のOA化が進み、経理業務がシステム化された現在は、コンピュータの扱い方さえ知っていれば、簡単に誰でもが日常的な経理業務はできるようになった。これらの変化に、専門学校の既存のカリキュラムは対応しきれていないのではないか。

 一方では、公認会計士や税理士といった国家資格を目指す大学生などのダブルスクールの一つとして、あるいは大学卒業生がこれらの国家資格を目指すために通うというケースが多くなっている。

 全盛期の派手さは望むべくもないが、現状の6,000人〜7,000人の規模で落ち着くのか、さらに減少を続けてしまうのか、今後の推移を注意深く見守りたい。


★603 タイピスト

 入学者数のピークは3年度の663人で規模は分野の中でも最小である。12年度には入学者数がわずか12人となり、ピーク時の1.9%にまで減少している。「タイピスト」という職業すら聞かなくなった現在では、この系が独立した分類として存在すること自体がナンセンスである。


★604 秘書

 この分野の入学者数のピークは、分野全体のピークの4年度ではなく翌年の5年度で、そのときの入学者数は11,511人であった。以降、10年度までの5年間は1,000人〜2,000人の規模で毎年減少を続けて、12年度には5年度比28.6%(実数にして8,214人減)にまで規模を縮小した。

 ただし、減少の幅を見ると、11年度には前年度比331人減、12年度には181人減と小幅になっており、3,000人ほどの規模で安定する可能性もある。

 この系は、短期大学に秘書科が設置されるまでは、スチュワーデス科と並んで人気の学科であり、多くの学生を集めた。特に、外国語(英語)が得意な高校生には人気があった。また、実務経験豊富なベテラン教員の熱心な教育にこの系が支えられた、という事実も忘れることはできない。しかし、それらの多くの教員は、短期大学に秘書科が設置されるのに伴って、ヘッドハンテングされ、今では短期大学の教授、助教授クラスに名を連ねている。


★605 経営

 分野全体と同じく4年度をピークに以降は減少傾向にあったが、12年度にはわずかながら増加した。これを増加傾向とするには時期尚早であるが、他の系の悲惨な状況に比べると明るい話題である。

 この系では、近年、インターネット関連の学科や、ベンチャービジネスなどの新しい学科が誕生し、入学定員が増加している。このことも、この系の増加の牽引の一つになっている。

 ただし、インターネット関連のビジネスは、技術が数年前に比べて格段に進歩している。これらの状況の変化に対して、どの程度現実に沿ったカリキュラムが構成できるかが成否の鍵を握っているといえよう。


★805 外国語

 この系には、英語・英会話・その他の外国語や留学のための英語学科が含まれている。他系の多くが、全体のピークとなった4年度比20%台にまで規模を縮小するなか、40%台に留まっていることは、健闘しているといえなくもない。国際化という時代背景に依るところが大きい。

 ただし、大学・短期大学に同種の学部・学科が多数存在するという現実は、大きな不安要因である。大学や短期大学でも、これら国際化の流れを受けて、より質の高い語学語学教育が行われ、海外の提携大学への留学や短期研修などに力を入れる傾向にある。大学・短期大学との競争をどう闘うのか、が今問われている。


★808 通訳・ガイド

 入学者数のピークは、3,006人だった元年度で、他の系や分野全体とは異なる動きを見せている。4年度以降は4年連続して減少したものの、9年度から11年度は増加に転じ、12年度には再び微減した。しかし、この12年間で最も入学者数が少なかった8年度と12年度を比較すると、563人の増加となっており、やや規模を回復している、といえなくもない。

 外資系企業のわが国への参入は依然として続いており、語学堪能で秘書的な実践力をもつ人材への需要は高い。しかし、気になるのは、「外国語」と同じく、大学・短期大学が壁となっていることであるが、9年度〜11年度の動向を見ると、今後は1,400人〜1,300人ほどで安定しそうな気配である。


★690 その他

 この系には、ホテル・観光・旅行・スチュワーデスなど多くの学科がある。

 入学者数のピークは5年度で、以降は減少傾向にある。入学者数が減りつづける一方で、定員数のピークは9年度となっており、学科の新設、改編に苦戦している姿が浮彫りとなっている。減少の幅を見てみると、この分野全体が、ピーク時の約4割に規模を縮小しているのに対して、この系統では約6割の縮小に留まっている。

 分類上、新しい学科はここに区分されるので、この「その他」が分野全体を牽引することができるかどうか、今後に注目したい。


▼起爆剤となるか?「IT革命」

 ここ1、2年のこの分野の数字を子細に見ると、一部の小規模な系を除けば、雪崩のような急激な入学者数の減少はおさまりつつある。これはこの1、2年で急速な社会の動きの変化、「IT革命」により、インターネットを介したビジネスが拡大しつつあるなかで、専門学校でもこれらに対するプロフェッショナルを育成する動きが出てきたためである。

 実際に12年度の新設学科には、インターネットビジネス、e−ビジネスといった学科が含まれていたし、現在弊社で調査中である13年度の新設学科には、「IT」をキーワードとした学科も含まれており、この傾向はしばらく続きそうだ。

 繰り返しになるが、社会の流れはかつてに比べ、ぐんと速度を上げている。特に情報関連技術に関していえば、めまぐるしいまでの進歩をとげている。専門学校が現場で即戦力として、職務に就ける人材を育成することを目的としているならば、教育内容もまた、時代の流れについていかなければならない。名前ばかり「IT」「インターネット」などと新しいキーワードを連ねていても、中身は今までとほとんど変わらないのでは本末転倒である。(伊藤)



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