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2001年6月号

コラム 平成12年度 学校基本調査報告書に見る専門学校の盛衰  第7分野(服飾・家政)

 1万8000人規模で安定か? ピーク時の80%台を3年連続してキープ

 前号に引き続き、専門学校を分野別に見ていく。今回は第7分野の服飾・家政。データは「学校基本調査報告書」の50分類によるもので、この資料をもとに平成に入ってからの12年間の定員数・入学者数を中心に、その推移を見てみたい。

▼全体の規模は10年前の68.1%に縮小

 この分野の中心となる「和洋裁」が、全体の7割〜8割を占めている。そのため、7年度までは「和洋裁」の動向が、分野全体の動向を左右していた。しかし、7年度以降は、「その他」の急激な増加により、全体の動きも「和洋裁」の動向とは異なる動きをみせるようになった。

 分野全体の規模は、専門学校全体のピークだった4年度から81.7%に縮小、また10年前の2年度からは68.1%に縮小した。入学者数の推移をみると、この12年間で最も入学者数が多かった元年度から8年度までは連続して減少傾向にあったが、9年度から11年度はわずかながら増加傾向に転じた。12年度にはやや減少したが、前年度比2.6%(実数にして493人)と規模は大きくない。

 9年度からの入学者数をみると、17,937人→18,210人→19,037人→18,544人となっており、しばらくは17,000人〜18,000人の規模で安定しそうである。

 以下、各系別の動向を入学者数を中心にみてみよう。

★701 家政

 入学者数が千人に満たない小さな系である。12年度には200人を割っている。注目すべきは小さい数字ながら、男子の入学者が若干ながら再び増えたことである。

★702 家庭

 「家政」同様、この系は一つの系として分析するには規模が小さすぎる。8年度からは男子の入学者も見られたが、増加にはつながらず12年度には再びゼロとなった。

★703 和洋裁

 服飾・家政分野の中心的な系である「和洋裁」は、冒頭で述べたように分野全体の7〜8割を占める入学者数を集めている。

 もともとは、和裁・洋裁の技術を身につけるという、伝統的な女子教育の柱となっていた。しかし、作るより購入したほうが安い、という社会状況の変化で、この伝統的な女子教育の学科は姿を消しつつある。これにかわって現在では、アパレル産業で活躍するスペシャリストの養成が主流であり、川上のデザイナー、川中の縫製技術者、川下のマオチャンダイジングなど、カバーする範囲は広い。

 入学者数の動向を見ると規模は縮小傾向にあるものの、8年度以降は1万4000人台で安定しており、増減も小幅に止まっている。

 また、男女別に見ると、2年度は男子10.9%だったが、12年度には23.5%と10ポイント以上も高くなっている。近年の男性ファッションデザイナーの活躍やファッション雑誌の増加を見てもわかるように、アパレル産業への男性の進出はめざましい。

 さらに、国内アパレルメーカーのアジア地域を中心とした海外進出が増えている。こうしたアジアの国々で技術者として活躍するために学ぶ海外からの留学生も少なくない。基礎から徹底的に技術を身に付け、母国語プラス日本語が理解できる人材の育成への動きにも今後注目してみたい。

★704 料理

 5年度までは急激に縮小を続け、以後は増減を繰り返しており、安定性に欠けると同時に、規模の小さい系で独立して分析は意味をなさない。この系と類似したものが、衛生分野の調理系統にあり、この学科の位置付けはかなり困難なものとなっている。

★705 編物・手芸

 この系は、元年度から11年度まで減少しつづけ、12年度はほぼ横ばいとなっている。

 ニット製品の産業自体が規模を縮小していることや、手芸が趣味の域を脱することが出来ない、また職業に結びつきにくいことなどから、専門学校の学科とするのは多少無理がありそうだ。

★706 その他

 分野全体が、急速に規模を縮小するなかで、12年度のこの系は元年度の268%増(実数にして2,103人の増加)と大幅な拡大となった。

 この系には、ファッションビジネス、スタイリスト、マーチャンダイジング、コーディネーターなど、ここ数年間で誕生した新しい学科が含まれている。ファッションへの注目度が上がるにつれ、ファッション業界の職種も多様化しており、こうした新しい学科が生まれやすい状態にある。

 また和洋裁で見たように、男子の進出にも注目したい。元年度の男子の割合が16.4%だったのに対して12年度は29.9%で、13.5ポイントの上昇となっている。実数でみると元年度205人→12年度1,004人で約5倍に増加している。

▼専門職をターゲットとした学科を

 この分野は戦後まもなくから、専門学校制度が成立する直前までの約20数年間が最も勢いがあった時期であり、各種学校当時は80数万人の学生数を擁していた。

 この頃には、学科のほとんどが女子教育という目的を持っていた。ところが、女子短期大学、女子大学の登場により、この分野は最初のパンチを受けた。さらに、縫製工場の海外移転に伴って、縫製技術者へのニーズが先細り、二度目のパンチとなった。

 一方で、女子教育から脱却した系統はかつての勢いはないものの堅調な動きを見せている。この分野のなかでも大きな規模を誇る「和洋裁」や、新しく誕生した学科の多い「その他」である。これらの系は男子の進出により入学者数の減少に歯止めをかけ、あるいは規模を拡大させている。

 この分野がかつての規模までの復活を望むのはかなり困難なことではある。しかし、過去の幻にとらわれることなく、現代社会における新しい職業教育を追及することで、壊滅的なまでの規模の縮小にも歯止めがかけられることは「和洋裁」や「その他」を見ればわかる。

 この分野の学科の構成は、難しさも伴うが、時代にマッチし、かつ卒業後の進路を見とおした職業教育のできる学科とカリキュラム開発に結びつけられれば、現代のニーズに見合った分野として、専門学校8分野の一翼を担っていくことができるだろう。(伊藤)



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