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2001年9・10月合併号

コラム 平成13年度 学校基本調査速報徹底分析  その1 専門学校

専門学校の学生数は5,585人(対前年度比)の大幅増
分野・系の二極化傾向は一段と鮮明に


 このほど発表された文部科学省の学校基本調査速報によれば、専門学校の学生数は64万2,893人(平成13年5月1日現在)で、3年連続して増加した。5年度ピーク時の70万1,649人には及ばないが、対前年度比実数で5,585人の大幅増となった。

 しかし、それでも5年度ピーク時と比較すれば約8.4%、実数で5万8,756人の減少となっている厳しい現状にあることには変わりはない。一方、分野・系を子細に見れば大幅に学生数を伸ばしている分野・系もあり、昨年度も本欄で指摘したように専門学校の分野・系の二極化傾向が一層鮮明になっているといえそうだ。

 詳しくは各分野の項で分析をするが、5年度ピーク時と前年度のいずれと比較しても学生数が増加しているのは、医療、衛生、教育・社会福祉、文化・教養で、農業は5年度比では伸びているものの対前年度比では学生数が減少している。工業、商業実務・外国語、服飾・家政はいずれと比較しても学生数を大幅に減らしている。

 後で詳しく触れるが、各分野とも例年にもまして「その他」の学生数が異常に多くなっている。8分野の合計では19万2,977人という巨大な数字で、全学生数の30%を占めている。


▼増加分の約半数は修業年限延長効果?

 下の表1は修業年限別にみた学生数を13年度と12年度について比較したものである。修業年限2年未満では572人減少しているが、反対に2年以上では6,157人増加している。

 修業年限別の学生数の増減は、法改正によって「理容」、「美容」が修業年限1年から2年に、また「調理」は2年コースも可能となったのに伴った一時的な延長効果と見られ、それは一昨年でほぼ終了したと思われていた。しかし、今年度も昨年度に引き続いて、ほぼ全分野にわたって修業年限の延長が見られる。ちなみに、5年度では修業年限1年の学生数は5万3,013人で全体の7.6%を占めていたが、今年度は3万4,740人となって、全体の5.4%を占めるにすぎなくなっている。

 この修業年限延長が、果たして社会や学生のニーズに沿ったものであるかどうか、それが専門学校の教育そのものの評価と密接に関わる問題だけに、さらに詳しい分析が必要である。


▼分野別概況


【工業】

 分野全体では長期の減少傾向が依然として続き、今年度も対前年度比96.9%(実数で4,095人)の大幅減となった。この結果、学生数はピーク時の70%を割り込み、65.6%となり、約3分の2の規模にまで縮小している。

 この分野は、もともと「電子計算機」と「情報処理」の2系を合わせた、いわゆるコンピューター系学科の占める割合が高い。ピーク時にはこの2系だけで10万人強の学生がいたので、その増減がダイレクトに工業全体の減少となりやすい傾向にある。ピーク時比で今年度は「電子計算機」58.5%となったが、「情報処理」はしばらくぶりに460人とわずかではあるが増加に転じた。しかし、これとてもピーク時比では56.5%の規模で、これら両系が工業全体の学生数を押し下げている一面は否定できない。しかし、一方で他の系を子細に見てみると、必ずしもこの両系だけが犯人ではないことがわかる。

 「土木・建築」は以前は比較的安定している系であったが、この5年間は連続して学生数が減少している。5年間だけで1万6,050人の減少で、ピーク時の半分近い規模にまで縮小している。関連の「測量」も4年間で1,692人の減少で、この両系の悩みは深刻だ。これらはいずれも国家資格関連学科であり、その意味では景気の影響を受けにくい分野であるが、昨今のゼネコン不況は一層厳しさを増し、その影響をもろに受けた感がある。

 「機械」のピーク時比24.3%も深刻で、学生数が1千人を割り独立した分類区分として扱われることさえ怪しくなっている。「電気・電子」も5年度比では41.9%に縮小している。

 一方、依然として学生数を伸ばしているのは「自動車整備」で、対前年度比実数で804人、5年度比では3千人近い増加となっている。反面、昨年度には期待された「その他」は一転して1,707人の大幅な減少となった。他の分野についてもいえるが、この「その他」の盛衰は、それぞれの分野の今後を占うキーとなるもので、このあたりにも工業の苦悩をかいま見ることができる。


【農業】

 この分野は他の分野と比較して学生数そのものが極端に少なく、また、専門学校としては特殊な分野であることなどのために、注目されることの少なかった分野である。しかし、ここ数年、規模は小さいながらも、動物、園芸、バイオテクノロジーなどを中心に着実に学生数を伸ばしていた。

 主たる分類の「農業」より「その他」が圧倒的に学生数が多いのはこのためで、ここ数年は、この「その他」が分野全体をリードしていたといっても過言ではない。しかし、今年度はこの「その他」も一転して減少に転じた。これらの学科は、大学や短期大学には類似の学科が少なく、期待されていただけに残念である。なお、専門学校の全分野のなかで「その他」が対前年度比でマイナスであるのは、今年度はこの農業だけである。

 他の分野でも触れるが、統計上の分類区分の整理統合問題は、この農業分野においても深刻だといえる。


【医療】

 この分野は、学生数では専門学校全体の中で28%のシェアを有して、分野としては最大規模を誇っている。中でも、「看護」は系として最大で、唯一10万人台を誇っていたが、今年度はその大台をわずかに割り込んだ。しかし、依然として学生数9万9,229人は他の系を圧倒しており、この「看護」の動向が、医療全体、さらには専門学校全体の動向を左右しているといっても過言ではない。

 「看護」は8年度ピーク時には10万4,421の学生数であったが、以降毎年学生数は減少し、今年度は2,406人という大幅な減少となった。本誌が再三にわたって指摘しているように、この分野は大学や短期大学でも学科の新設が相次いでいる。そのうちの一部は専門学校からの移行でもある。専門学校としての特色を前面に打ち出し、大学や短期大学との上手な住み分けができるかどうかが、生き残りのポイントとなろう。

 この分野は「看護」の巨大さのゆえに、他の系の影が薄いが、今年度は、「看護」以外の系に新しい動きが見られ注目される。

 とくに、東洋医学の「はり・きゅう・あんま」と「柔道整復」は依然として増加傾向が続いていることに注目をしたい。両系合わせての2,495人は、小さい系一つ分の学生数の増加となっている。なかでも、「柔道整復」は対5年度比では194.2%と2倍に迫る大幅な増加となっている。

 また、「その他」には、リハビリテーション関係の理学療法士、作業療法士の他に一部東洋医学系の学科も含まれているが、これも堅調で、対前年度比108.8%(実数で3,219人増)となっている。これを5年度と比較すると実に3倍を超える規模にまで急成長したことになる。

 それにしても4万人弱は、分野第2位の巨大さで、「その他」でくくるにしては大きすぎる。


【衛生】

 今年度も増加傾向は変わらず、対前年度105.6%(実数で3,807人増)の大幅な増加となっている。その結果として、対5年度比では192.7%と、2倍に迫る勢いとなっている。

 その大きな原動力となっているのは、今年度も「美容」で、実数では4,317人の大幅増となっている。小さな系であれば、優に一つ分の学生数増である。これは、修業年限延長に伴う一時的なものとは必ずしもいえず、新しい何かが創造され、そのことが若い人々に受け入れられた結果と考える方が素直である。関係者の真摯な努力に敬意を表したい。
 同様に増加傾向にあった「理容」は、一転して学生数が減少した。これは明らかに修業年限の延長効果切れと見てよい。

 一方、過去数年大幅に学生数を伸ばしていた「調理」は3年連続して減少し、対前年度比95.5%(実数で737人減)となった。また、大学・短期大学とバッティングする分野である「栄養」は長期の減少傾向が続いていたが、久しぶりに156人とわずかではあるが増加に転じ注目される。

 この分野でも「その他」が相変わらず健闘している。昨年度ほどの大幅ではないが、107.9%(実数で414人増)となった。なお、この「その他」には、製菓、製パンなどの学科が含まれる。


【教育・社会福祉】

 この分野は3系に分かれているが、今年度もすべての系が対前年度比でプラスになっている。長期低落傾向を見せていた「教員」も112.7%(実数で531人増)と久しぶりの大幅増加となった。「保母」も前年度を707人上回った。

 一方、社会福祉・介護福祉を中心とする「その他」は昨年度までの勢いはやや鈍化したものの、依然として上昇傾向は続いている。対前年度比ではわずかではあるが101.2%(実数で522人増)となった。

 これらを総合した結果として、この分野は全体で対前年度比102.9%(実数で1,762人増)となり、対5年度比では178.8%と、2倍に迫る急成長を見せている。

 本誌では再三にわたって指摘しているが、この分野の「その他」は、時代が求めている学科群を擁していることには異論の余地はないが、大学や短期大学も生き残りを求めて、この分野に積極的に進出している分野でもある。医療分野同様にいかに住み分けを上手にするかが、この「その他」の今後の盛衰を左右する大きな要因となろう。

 なお、先にもふれたが、この分野には3つの分類区分しかない。そのために、近年急拡大している介護福祉や社会福祉が「その他」でくくられ、全体の約73%を占める巨大な分類区分となっている。くどいようであるが50分類の耐用年数切れの典型といえる例である。


【商業実務・外国語】

 この分野は長期の低落傾向が続いている。今年度もその傾向は続いているが、対前年度比で実数でわずか152人の減少(99.8%)にとどまった。これが来年度以降反転に転じる兆しとなるかどうかは予断を許さないが、この分野にとって久しぶりの明るいニュースではある。

 この分野は、昨年度は「その他」も含めて全ての系で対前年度割れを記録したが、今年度は、「商業」と「その他」で対前年度増となっている。

 しかし、全体では5年度比44.5%と半分以下の規模にまで縮小している厳しい現状にあることに変わりはない。専門学校全分野のなかで最も深刻な分野であることもまた事実である。

 本誌が再三にわたって指摘しているように、この分野のほとんどの学科が、大学・短期大学の学科と正面からバッティングしている。そのために大学や短期大学の熾烈な生き残り競争の影響をもろに受けていることが、この分野の衰退の大きな原因の一つとなっている。しかし一方で、それだけの理由で、10年にも満たない短期間に規模を半減するものだろうか、という素朴な疑問は昨年度に続いて依然として残る。

 対5年度比「タイピスト」2.0%は特種で極端な例としても、「秘書」25.0%、「経営」26.4%、「商業」27.8%、「経理・簿記」33.4%、と軒なみ4分の1から3分の1以下の規模に縮小している。これに、「外国語」の41.8%を加えれば、8系のうち実に6系で半分以下になっている。かろうじて50%以上を保っている「通訳・ガイド」も50.5%という有様である。

 一方、明るい材料も久しぶりに登場した。「その他」が対前年度比で106.0%(実数で2,482人増)の大幅増となった。昨年度は、この分野の「その他」だけが対前年度マイナスを記録していたことを思えば、これは驚異的な数字といえなくもない。

 教育・社会福祉など他の分野の「その他」でも明らかなように、学科のスクラップ&ビルドが分野のなかで活発に行われる場合、最も顕著に数値が変動するのは、この「その他」であり、分野の将来を占うバロメーターの役割を果たしている。

 昨年度までは、この「その他」さえもがマイナスであり、商業実務・外国語が将来の見通し真っ暗な壊滅的状況だといわれたのもそのためである。この分野にとっても、この「その他」の盛衰が今後を大きく左右することには変わりはない。注意深く今後の推移を見守りたい。

 それにしても、教育・社会福祉同様に、「その他」が異様に巨大で全体の57%以上を占めている。一方で、「タイピスト」など独立の分類区分としては耐用年数のとっくに切れたものが残っていることを指摘しておきたい。


【服飾・家政】

 この分野は、昭和55年度の7万人弱をピークに、9年度まで毎年学生数を大幅に減らし続けていたが、10年度になってようやく減少が止まり、昨年度までの3年間はわずかではあるが学生数が上昇していた。しかし、今年度は再び減少傾向に転じ、対前年度比97.0%(実数で1,017人減)となった。

 これは、昨年度までこの分野の牽引車の役割を果たしていた「その他」の増加が、今年度は実数でわずか340人の増加にとどまったことが大きな原因である。また、この分野の主力学科である「和洋裁」の大幅減も響いている。


【文化・教養】

 この分野は、対前年度比101.9%、対5年度比107.9%であり、専門学校の中にあっては比較的安定している分野といえる。

 ただし、「その他」を除いて、この分野で最大規模を誇る「デザイン」が、この3年間で約2千人弱を減少させており、若干気掛かりではある。

 「その他」は相変わらず健闘しており、昨年同様に2千人近い大幅増となっている。


▼10年間隔で50分類を変えませんか

 以上、学校基本調査速報にもとづいて、専門学校を50分類で概観しながら、小社なりの分析を紹介してきた。

 全ての分野に共通していえることは、「その他」の動向がそれぞれの分野に大きな影響を与えているということである。端的にいえば、「その他」の盛衰がそれぞれの分野の盛衰の鍵を握っており、「その他」を見ることによって、それぞれの分野が今後どのように推移するかを予測できるといっても過言ではない。

 昨年同様、それぞれの分野の項で若干ふれたが、文部科学省のこの50分類が、専門学校の実態を正しく把握するのにはもはや十分なものではないということを、くどういようであるが再び指摘したい。

 64万数千人の50分類は単純には、1分類区分あたり1万2、3千人となる。

 今年度、2千人以下の分類区分は、「機械」945人、「農業」429人、「准看護」346人、「商業」884人、「タイピスト」2人、「家政」371人、「家庭」36人、「料理」609人、「手芸・編物」405人、「茶華道」118人、「受験・補習」0人となっている。

 一方で、教育・社会福祉「その他」45,518人、商業実務・外国語「その他」43,999人をあげるまでもなく、8分野の「その他」合計は192,977人であり、毎年数千人以上増え続けている。これは、専門学校全体の30%であり、専門学校の最大学科は「その他」であるということになる。

 連続するから統計であるという主張は正しい。また、統計の項目替えがどれほどの困難な作業を伴うかも理解はできる。しかし、専門学校の教育は職業教育が使命であり、そのために時代のニーズに密接に連動して学科の改廃が日常的に行われる専門学校の学科分類は、時間と共に陳腐化することは避けられない。

 国政選挙でも、ようやくにして国政調査と連動しての地区割変更の制度が始まった。

専門学校の50分類も10年で1回は大きく見直すという制度・勇気があってもよいのではないだろうか。(鎌田)




 (注)小社では、唯一の例外として文部科学省統計の分類を一部変えて統計をとっている。それは、外国語の専門学校のほとんどが、いわゆるビジネス系の学科を設置し、実態としても大学の英文科のようなものは存在しないにもかかわらず、学問系列上、外国語は文化・教養であるとする文部科学省分類は専門学校の実態を正しくとらえていない、という考えによるものである。

 従って、小社では第6分野を「商業実務」ではなしに「商業実務・外国語」とし、文化・教養の「外国語」と「通訳・ガイド」を含めた形で統計をとっている。この分野と文化・教養の解説では上記を踏まえているので、ご了承願いたい。



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