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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2001年11月号

コラム 高等教育機関への志願者のパイは卒業者数と就職率の増減の総和で決まる


 『平成14年3月高校・中学新卒者の就職内定状況等(13年9月末現在)について』が厚生労働省より発表された。その概要は以下のとおり。

 (1)求人数は18万5千人で、前年同期を10.0%下回る。

 (2)求職者数は22万3千人で、前年同期に比べ3.8%減少。

 (3)求人倍率は0.83倍で、前年同期を0.06ポイント下回る。

 (4)就職内定者数は8万2千人(前年同期火6.2%減)であり、就職内定率は37.0%で、前年同期を5.5ポイント下回る。就職内定率を男女別に見ると、男子40.7%(前年同期を5.9ポイント下回る)、女子は33.0%(前年同期を5.2ポイント下回る)。


 高等学校卒業者の就職率は、社会のニーズの変化や長引く不況による影響で求人が減ったので就職出来ない人が増えた、ということと同時に、もともと就職を希望する高校生が減った、という側面があり、「鶏が先か卵が先か」に似ていなくもない。

 ここでは、この高校卒業者の就職率の変化が高等教育機関、特に専門学校の学生募集にどのように関わるかについて以下に見てみたい。 

 少子化の影響に伴って、日本人の18歳人口は年々減少の一途を辿っている。これとほぼ連動して、高等学校卒業者数も激減している(表1)。

 表で明らかなように、平成4年度まで高等学校卒業者の就職者数は穏やかな減少であったが、平成5年度からは18歳人口の減少と軌を一にして急激な減少となった。年間2万3千人から5万人を超える人数の減少であった。しかし、13年度からは、減少幅が極端に縮小している(この穏やかな傾向は18歳人口との関連で、今後も続く)。

 18歳人口の減少によって、大学などへの進学者数も減少していると考えがちだが、実はそうでもない。これは卒業後の高校生の進路選択と密接に関係してくる。以前は、高校卒業後に就職する生徒が多くを占めていたが、近年では、6割以上の学生が進学の道を選んでいるためだ。 

 このような状況を数値で表したのが、表1であり、年度別の卒業者数および全学生に占める就職率と就職者数、前年度に対する就職者数の増減を示している。

 表1からも明らかなように、(以下、4ページに続く)高校卒業者数は減少の一途を辿っている。しかし同様に、高校卒業時点での就職率も減少しているのが分かる。就職率は、平成4年度〜9年度にかけての5年間で、10%近くも減少した。それ以前の減少幅が5%前後だったことを見ると、就職率はここ10年程で一気に減少し始めたといえる。

 平成9年度〜13年年度にかけての高校卒業者数を見てみると、前年度に対し、それぞれ4.2%、5.4%、2.5%、0.2%の割合で減少している。一方、就職率は、同様に対前年6.8%、15.9%、10.2%、0.6%と卒業者数の減少を倍以上も上回る勢いで減少している。このことは、卒業者数は減少しているが、それ以上に就職者数も減少しており、それは大学等への進学者数そのもの(その予備軍も含めて)はそれほど減少していない、といえなくもない。

 表2は、各年度ごとに各都道府県が、どれくらいの就職率のところにあるかを示したものである。これによると平成9年度までは、就職率が30%を超える都道府県が半数以上あった。しかし、11年度には、就職率20%以上と20%以下の都道府県数がほぼ同数になり、さらに13年度には、就職率10%と20%の都道府県数が同数の19で、主流を占めるようになった。

 表3−1,2は、就職率の高い都道府県および低い都道府県のトップ5を年度別に算出したものである。表からは、地域による就職率の偏りがうかがえる。就職率の高い県は、東北と九州に限られており、青森はいずれの年度においても全国一就職率が高く、毎回全国平均を15〜20%上回っている。

 一方、就職率の低い都道府県では、平成4年までは沖縄が上位に食い込んでいるものの、それ以外は関東、関西など大都市圏にある都府県で占められている(表3−2)。平成9年度以降は多少の順位の差はあるものの、毎年、東京、神奈川、千葉、京都、奈良の5県が上位を占める結果となった。

 なかでも東京、神奈川で高校卒業後に就職する学生は過去2年間では1割にも満たないまでに減少した。上位に大阪と愛知が入っていないが、大阪、愛知はいずれの年度も全国平均をそれぞれ約5%、約2%下回る数値で推移している。

 しかし地域差はあるとはいえ、表3−1と表3−2を見比べて見ると、その差は縮小されてきているのが分かる。最も就職率の高い青森と最も就職率の低い県を比べて見てみると、平成9年度まではその差が多い時で36ポイントあったのに対し、10年度には30ポイントを割り、13年度には25.6ポイントにまで縮まった。

 これは例えば、昭和57年から平成13年にかけての就職率が、東京では21.5ポイント減少したのに対し、青森では29.2ポイントと東京よりもより大幅に減少したことにある。つまり、全国的に就職率が高い県でも、その減少の度合いは激しくなっているということで、このことからも、全国的な就職率の減少、とりも直さず高等教育機関への進学予備軍の増加が見てとれる。


▼就職率の減少は専門学校にはチャンス!

 この高校卒者数と就職率の減少をもう一度実数で見てみる。平成9年度〜13年度にかけて、卒業者数は、62,687人、 78,379人、 33,780人、2,059人それぞれ減少している。しかし一方で、就職率は0.8%、2.5%、1.6%、0.2%それぞれ減少している。この減少率を各年度の卒業者数に乗じると、それぞれ、11,528人、34,067人、21,262人、2,653人が就職以外の進路を選択したことになる。 これらが必ずしも全て進学者ないしはその予備軍であるとはいえないが、先の卒業者数からこれらの数字を減じた人数が、受け入れ側か見れば、実際のパイの減少と考えてよい。

 つまり、進学者数のパイという観点から見れば、高卒者数は、一般に言われているほどには急減していない、ということになる。
高校生が減ったので応募者が減った、というのは必ずしも真ではない。要は各校の工夫次第だとはいえないだろうか。(立山)




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