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2001年12月号

コラム 平成13年度 学校基本調査速報より  その1 分野別・修業年限別学生数


修業年限2年以上で学生数が大幅増加

 『学校基本調査速報』によると、13年度の専門学校の学生数は、64万2,893人で前年度より5,585人の増加となっている。今回は、修業年限別の学生数と、それをさらに分野別に分けた学生数について前年度と比較して見てみたい。

 なお、次ページの表は、文部科学省の分類のうち、第6分野を「商業実務・外国語」とし、第8分野の「外国語」と「通訳・ガイド」を加えて集計している。

 専門学校全体では、修業年限「1年」の学生数は減少し、それ以上の区分ではいずれも増加している。特に、「2年〜2年11ヶ月」が最も増加の幅が大きく、13年度では全体の学生数の61.6%を占めている。

 また、修業年限「3年〜3年11ヶ月」、「4年以上」は、いずれも1,600人を超す大幅増となっている。このことを見ても、専門学校の学生数の増加は修業年限の延長によるところが大きいといえそうだ。


▼分野別に見た修業年限別学生数

<工業関係>

 全体では、近年のゼネコン不況などの影響により、前年度比約4,000人という大幅な減少となった。特に、全体の78.8%を占める修業年限「2年〜2年11ヶ月」の約2,500人減が分野全体の足を引っ張る形となっている。また、専門学校全体では「3年〜3年11ヶ月」や「4年以上」が増加で、修業年限の延長傾向がみられるにもかかわらず、この分野は両区分合わせて約1,100人の減少となっている。

<農業関係>

 全体では、前年度より160人減となっているが、この程度の変動は例年見られる現象であり、大きな変化とはいえない。修業年限「2年〜2年11ヶ月」(分野全体の49.6%)と、「3年〜3年11ヶ月」(同37.8%)がこの分野の学生数のほとんどを占めているが、今年度は「2年〜2年11ヶ月」で学生が減少し、「3年〜3年11ヶ月」で学生が増加している。

 この分野でも徐々にではあるが修業年限の延長傾向が見られる。

<医療関係>

 少子高齢化などの社会的背景もあって、学生数を好調に増やしているこの分野は、13年度は3,806人の大幅増となった。特に、医療技術系や東洋医学系の学科の新設が多く、これが学生数の増加に大きく寄与している。

 最も学生数が多いのは、修業年限「3年〜3年11ヶ月」で、前年度比約2%増(実数にして2,320人増)となり、全体の69.7%(実数にして125,236人)を占めている。「4年以上」でも前年度比19%増(実数にして2,630人増)と大幅な増加となった。

 医療技術が高度化していることの他に、大学・短期大学の同系分野への進出などの影響を受けての修業年限延長と思われる。

<衛生関係>

 近年の美容系学科の新設ラッシュにより、全体の学生数は5.6%増となっている。修業年別に見ると、やはり「2年〜2年11ヶ月」で前年度比7.5%増となっており、圧倒的な増加率となっている。「1年」が、減少していることと合わせて考えると、美容系(2年制)の学科新設のほか、調理系学科の1年制から2年制への移行も増えていることが影響しているものと思われる。

<教育・社会福祉関係>

 医療関係同様、社会的ニーズに対応して、全体で前年度比2.9%増(実数にして3,804人増)となっている。目立つのは、修業年限「1年1ヶ月〜1年11ヶ月」の増加で、前年度比147.5%という驚異的な数字となっている。これは、精神保健福祉士の受験資格が得られる学科が急増したためと見られ、今後の動向が注目される。

 2年以上でもそれぞれ増加しており、なかでも「3年〜3年11ヶ月」の修業年限の学生数が1万5,000人を上回っている。

<商業実務・外国語関係>

 最初に示したように、文部科学省の分類では第6分野を「商業実務」としているが、弊社では実態に合わせて、第6分野を「商業実務・外国語」としており、第8分野の「文化・教養」のうち「外国語」「通訳・ガイド」を第6分野に加えている。

 全体では学生数が微減となっているが、修業年限別に見てみると、「2年〜2年11ヶ月」で前年度比1.6%(実数にして1,044人増加)の増加となった。しかし、「3年〜3年11ヶ月」と「4年以上」を合わせると、963人の減少となっている。他の分野とは異なり、この分野では修業年限の延長傾向にはないことがわかる。

<服飾・家政関係>

 9年度まで学生数の減少が続き、その後わずかながら増加に転じたものの、13年度は再び減少傾向となった。修業年限別では特に「2年〜2年11ヶ月」、「3年〜3年11ヶ月」の減少が大きい。増えたのは「1年〜1年11ヶ月」のみで、実数にして3人とわずかに留まっている。

<文化・教養関係>

 他の分野に比べ、比較的安定しているこの分野は、全体では前年度比1.9%増となっている。この分野の中心は、修業年限「2年〜2年11ヶ月」で分野全体の8割を占めている。今年度もこの「2年〜2年11ヶ月」は増加傾向にあり、前年度比2.3%増(実数にして1,652人増加)となっている。

 他の修業年限を見ると、「1年」、「3年〜3年11ヶ月」、「4年以上」で減少しており、商業実務・外国語分野同様に、修業年限は延長傾向にないことがわかる。


▼教育内容に合わせた修業年限設定を

 分野ごとに見ると、分野の事情によって動きはまちまちであるが、修業年限「1年」の学生数は、全体的に減少傾向にあるといえる。学生数のピークであった5年度は修業年限「1年」の学生数が、5万3,013人で全体の7.6%であったのが、13年度には34,740人で全体の5.4%にまで縮小している。
 理容・美容系の学科は法律改正により2年制へ移行し、調理系の学科も1年制から2年制への移行が進んでいる。これらの移行はもちろん時代のニーズがあったからであり、当然の流れであるといえなくもない。修業年限が延長傾向にあるのは、これらの学科だけではない。医療技術系など、国家資格関連学科にも多く見られる。

 一方で、法定科目に縛られない、商業実務・外国語、服飾・家政、文化・教養などの分野では、逆に修業年限3年以上の学生数が減少している。これらの学科は、学科ごとの定員数の推移と合わせて分析しなければ、必ずしも修業年限が短縮の方向にあるとは即断できないが、大まかにいえば延長傾向にはないといえる。また、学生のニーズについても、3年、4年制の学科ではなく、2年制の学科にあるのかどうかについても、この数字だけでは判断しづらい。

 職場における専門職の役割は年々、高度化、複雑化する傾向にある。しかし、だからといって、専門学校の学科の修業年限を延長すればよい、とは単純にはいいきれない。修業年限の長短が必ずしも教育効果に比例するとは限らないからだ。ただいえることは、社会の動向に敏感に反応し、柔軟に対応できるのは専門学校の大きな特徴のひとつである。学科によっては、適宜修業年限を見なおすこともまた必要なことであるといえる。(伊藤)




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