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2001年12月号

コラム 平成13年度 学校基本調査速報より  その2 都道府県別入学者数の推移


専門学校の入学者は大都市部に集中
東京・大阪・愛知・福岡・北海道の5都道府県で全体の57.6%


 13年度の『学校基本調査速報』によると、専門学校の学生数は64万2,893人で、3年連続の増加となっている。本誌9・10月合併号で見たように、専門学校の入学者数を分野・系統別に見てみると、人気・不人気がかなり顕著に表れていることが分かったが、ここでは地域別に専門学校の入学者数の推移を過去10年間のデータとともに見てみたい。


▼東京だけで全体の28.0%を占める

 13年度の学校基本調査速報によると、専門学校の入学者総数は31万4,730人であった。これを都道府県別に多い順にあげれば、東京(8万8,029人)、大阪(3万9,362人)、愛知(2万640人)、福岡(1万7,676人)、北海道(1万5,677人)となっている。この5都道府県だけで合計18万1,384人となっており、全体の57.6%を占める。特に、東京は他の道府県と比べて圧倒的に入学者が多く、東京だけでも全体の28.0%を占めている。北海道を除いては、東京をはじめ、大阪、愛知、福岡は大都市をかかえており、専門学校の入学者はこれら大都市部に集中していることがわかる。

 一方、入学者数が少なかったのは、鳥取(574人)、和歌山(800人)、島根(868人)、山形(930人)、滋賀(980人)となっており、いずれも1,000人以下の入学者数となってる。10年前の4年度と比較しても、これら上位5都道府県と下位5県の顔ぶれは変わらずで、専門学校の入学者の動向は都市部と地方との二極分化の傾向にあることがわかる。

【北海道・東北地区】  北海道・宮城は緩やかな減少傾向

 地区全体では、8年度以降5年連続の入学者減となっている。ここ4年間について見ても、3万5,000人台を維持しつつ緩やかに減少している。

 県単位で動向を見ると、札幌と仙台という2大都市を持つ北海道・宮城に入学者は集中しており、両方ともが1万人を超える入学者を集めている。しかし、近年どちらも大幅にではないものの緩やかな減少傾向にある。

 最も入学者数が少ないのが山形で、ここ10年間で1,000人を超えたことがない。10年間の動きを見ると、10年度までは減少傾向であったが、10年度以降は930人台まで盛り返し、そのまま停滞している。

 他の県では岩手と福島で、専門学校全体の入学者のピークだった4年度に比べて、13年度は入学者が増加している。2大都市への流出に歯止めがかかっているともいえ、この2県の健闘ぶりがうかがえる。

【関東地区】  東京で減少傾向、栃木・群馬・埼玉は増加

 関東全体の入学者数のうち東京への入学者が約7割を占めており、この地区の動向は東京の動きと連動しているといってもよい。圧倒的な東京人気ではあるが、その東京もここ10年間は減少傾向となっている。11年度までは、6年度の対前年度比約1万1,000人の大幅減を除いて、前年度比では平均して約2,200人の減少であった。12年度には約1,000人増加したものの、13年度には再び約900人減少しており、全体からみると減少傾向は変わらずとなっている。

 東京が大幅に入学者数を減らしている中で、栃木・群馬・埼玉の3県では、増減を繰り返しているものの、4年度と比較すると13年度は小幅ではあるが増加している。この入学者数の推移だけでは即断できないが、長引く経済不況の影響から、生活費などが高い東京ではなく、地元の専門学校に進学する学生が増えているものと思われる。

 茨城・千葉・神奈川は、全体的にみて減少傾向にある。特に神奈川では、多くの他県が前年度と比べ、入学者数を増やしているにもかかわらず13年度も減少している。

【中部地区1 甲信越地区】  新潟が増加傾向を保ち大健闘

 この地域は、大都市と呼べるような都市がなく、地元の他には東京、愛知(名古屋)、大阪を進学先に選ぶ傾向が強い。地区全体では、専門学校全体の動きと似ており、8年度以降、減少に転じ、12年度からはわずかながら再び増加し始めている。

 甲信越地区で最も入学者が多いのは新潟で、これは10年前からずっと変わらない。新潟は4年度と比べて13年度は実数にして1,773人増えた。また、11年度までは6,500人台を超すことがなかったが、12年度以降は7,200人台をキープし、安定した人気を誇っている。

 その他の県では、減少傾向にあるところと増減を繰り返しているところとがある。特に福井では7年度以降13年度まで毎年増減を繰り返すという不安定な状態が続いている。石川では、専門学校全体が2年連続増加傾向にあるなかで8年度以降、6年連続して減少傾向にあり、今後が気がかりである。

【中部地区2 東海地区】 愛知は10年前の24.6%の大幅減

 東海地区はここ10年間は連続で入学者数が減少している。しかし、ここ3年間ほどは前年度比1%以下に留まり、やや落ち着きを見せている。

 この地区で最も入学者数が多いのは、名古屋圏に専門学校を多く持つ愛知。13年度は4県全体の約40%が愛知への入学者という圧倒的な人気を誇っている。愛知は全国的に見ても第3位に入るほど人数を集めているものの、推移を見ると、全体的には減少傾向で、10年前と比べると24.6%の大幅ダウンとなっており、このまま減少し続けると2万人の大台をも切ってしまいそうな観がある。

 その他の県では、静岡・三重で、10年間増減を繰り返しているが、13年度は10年前とあまり変わっていない。特に三重ではこの10年間で10年度が最も入学者数が多く、11年度以降は減少し続けるという異質な動きを見せている。岐阜は全体的に見ると減少傾向となっている。

【近畿地区】  京都・大阪・兵庫が復調の兆し

 近畿地区では、圧倒的に大阪が入学者数を集めており、これに隣接する京都・兵庫が続いている。一方、滋賀・和歌山は全国的に見ても入学者数が少ない、という典型的な二極分化傾向となっている。

 地区全体で見ると、ここ6年間は2年という間隔で増減を繰り返していることがわかる。13年度は、前年度比3.4%増であった。

 入学者数で全国2位であった大阪では、4年度以降、3年連続して減少し続けたが、その後は2年ごとに増減を繰り返している。13年度は前年度比4.5%(1,715人)増となっている。東京・愛知などが減少傾向にある中での増加であり、その健闘ぶりは注目される。また、大阪は4年度との比較でも減少してはいるものの、5.2%の減少にとどまっている(東京29.2%減、愛知24.6%減)。
 全国で2番目に入学者が少なかった和歌山だが、ここ3年間は連続して微増を続けており好調の兆しが見えるといえそうだ。

【中・四国地区】  岡山が前年度比7.8%増で好調

 地区全体では、専門学校全体と同じく、2年連続の増加となっている。前年度比1.4%というわずかな増加ではあるが、今後の動向に期待したい。

 前年度と比べ、13年度に増加したのは、島根・岡山・広島・徳島・愛媛の5県。なかでも、岡山は前年度比7.8%増となっており、地区内では最も大幅な増加となっている。全国的に見て、13年度に最も入学者数が少なかった鳥取は、4年度以降、6年度に700人を超えたものの、増減を繰り返して不安定な動きを見せており、13年度には4年度並みの入学者数となっている。

 専門学校全体の動向に反しているのが、山口である。4年度からも順調に増加し続け、10年度には前年度比14.5%と大幅な増加もあった。しかし、11年度からは減少傾向に転じた。

 この地区で最も入学者数を集めている広島は、13年度に5年ぶりの増加となった。

【九州地区】  福岡で7年連続増加。安定した動き

 九州地区は、10年間増減を繰り返しており、安定していない。13年度はほぼ前年度並みだった。

 この地区では福岡が圧倒的な人気を集めている。5年度と6年度には入学者が減少したものの、以降は7年連続の増加傾向となっており、今後も安定して増加し続けそうな勢いである。
 また、九州地区のいずれの県においても、専門学校全体の動向と異なった動きを見せており、全体で入学者数が減少に転じた4年度以降も増加しているケースが多い。専門学校全体が4年度比13.6%減であったのに対し、佐賀で30.7%増、大分で11.9%増、21.5%増となっており、その健闘ぶりが目立つ。ちなみに、地区全体では4年度比6.0%増で全体でも増加していることがわかる。


▼高卒者の動向がカギ

 北海道・東北地区や、関東地区のように、都市部での入学者数が減少し、近隣県での増加という現象をみると、都市・地方の二極分化もやや緩和されている地区もあるといえなくもない。前述したように、長引く経済不況の影響もあり、都市部の専門学校への進学よりも、通学圏内、あるいは都市部よりも生活費が安価な地域の専門学校へ進学する傾向の表れ、とも考えられる。

 就職難のおり、とりあえず専門学校で学ぼうという入学志望者も少なくないはずだ。事実、来春卒業予定者の就職を希望している高校生の就職内定率は、10月末時点では前年同期比で5.6ポイント減の50.7%で、これまで最低だった1999年を下回り、過去最悪となっている。

 これは文部科学省の調査でわかったもので、就職希望者は25万6千人、うち内定者は約13万人(男女ともに6万3千人)にとどまっている。つまり2人に1人しか就職先が決まっていないということであり、今後若干の改善が見られたとしても、過去最悪の結果となることは必至の状況にある。

 高校卒業生の就職が厳しいというこの状況はここ数年間変わってはいない。過去の統計を見ればわかるように、この就職の厳しさに連動するように高校卒業生の就職率は年々減少している。もちろん、就職率の低下はこの就職の厳しさばかりではないが、ここではその詮索はさておくとして、問題は、これら就職ができなかった人たちの動向である。

 ことの幸・不幸は別にして、実際問題として就職ができない高校卒業生が来春には大量に発生する。これらの若い人たちがフリーターとなるか、進学予備群となるかは、彼らにとって専門学校が魅力のあるものとして映るかどうかにかかっている、とはいえないだろうか。(伊藤)

 




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