先月号で、平成14(2002)年度から日本語能力試験の出題基準が一部改訂されることを紹介したが、今回は、先月号で触れなかった各級の語彙の改訂について紹介する。
●語彙の改訂について
各級の語彙数は、平成14年度から以下のように改定される。
・4級の語彙は、原則として語彙表の728語を含む800語および「あいさつ語等表現」のなかの当該項目とする。(4級の語彙は語彙表の679語を含む800語を原則とする)
・3級の語彙は、原則として語彙表の1409語を含む1500語および「あいさつ語等表現」のなかの当該項目とする。(3級の語彙は4級と併せて語彙表の1315語を含む1500語を原則とする)
・2級の語彙は、原則として語彙表の5035語を含む6000語および「あいさつ語等表現」のなかの当該項目とする。(2級の語彙は語彙表の4833語を含む6000語を原則とする。)
・1級の語彙は、原則として語彙表の8009語を含む10000語および「あいさつ語等表現」のなかの当該項目とする。(1級の語彙は語彙表の7800語を含む10000語を原則とする。)
以下、語彙級が変更になったもの、新たに追加・削除になったもの、及びあいさつ語等の表現一覧などを紹介する。
改訂された各語彙級は、語彙−意味(漢字)の順で提示し、意味(漢字)の必要ないものは、省いてある。
なお、次の点に留意すること。
・「コンピューター/コンピュータ」とある場合は、両方を採用していることを示す。
・「(ご)しゅじん」とある場合は、「しゅじん」と「ごしゅじん」の両方を採用していることを示す。
・「ありがとうございます・ました」とある場合は、「ありがとうございます」「ありがとうござました」の両方を採用していることを示す。
・助数詞、接辞、造成成分など、他のことばについて用いられるものについては、意味の欄で「〜」を付けて示す。
・「〜する」の形で動詞としても使われる語は、『出題基準』に合わせて、3・4級語彙表と1・2級語彙表で見出し語の表記を若干変えている。つまり、3・4級語彙表では、名詞として使われる語幹部分に「(する)」を付けて提示しているが、1・2級語彙表では、語幹部分のみの形を挙げてある。例えば、1・2級語彙表で「移動」とある語は、「移動」と「移動する」の両方を兼ねている(『出題基準』p.117参照)。なお、漢字1字の「〜する」型動詞についても、『出題基準』に準ずる。
1・2級語彙表では、「独立語として使われる語が造語成分のように用いられることがあるが、そのような語には特に「〜」印は付けていない」(『出題基準』p.116)と記載されているが、改訂版語彙表においては、造語成分としての用法が先に掲載されている場合(3・4級語彙表では「〜」印を付けて掲載しているが、1・2級語彙表では「〜」が付いていない語)は、別項目として扱う。
例:「とき(〜時)」3級から4級に変更
「とき(時)」2級語彙
【新たに4級になった語彙】
★3級から
いかが、うるさい、おおい−多い、おおきな−大きな、けいかん−警官、こっち、さいふ−財布、すくない−少ない、ちいさな−小さな、とき−〜時、とし−年、どっち、ながら−(〜しながら)、なくす−無くす、なぜ、みどり−緑、むら−村、ゆうはん−夕飯、よわい−弱い
★2級から
あお−青、あか−赤、あっち、あめ−飴、いぬ−犬、かてい−家庭、おまわりさん、きいろ−黄色、くもり−曇、くろ−黒、こうさてん−交差点、こうちゃ−紅茶、じゅう−〜中、しろ−白、そっち、たて−縦、だれか−誰か、なん−何〜、ぬるい−温い、ねこ−猫、はれ−晴れ、ぶんしょう−文章、ほんとう−本当、ろうか−廊下、コーヒー、コピー(する)、シャワー、ポスト
★1級から
だけ−〜だけ、カップ、カレー
★新たに追加
おふろ−御風呂、ペット、ラジカセ
【新たに3級になった語彙】
★4級から
かない−家内、(ご)しゅじん−主人、たいてい−大抵、もちろん−勿論
★2級から
あさい−浅い、おっと−夫、おる−折る、おわる−〜終わる、かたい−堅/硬/固い、けん−県、さか−坂、さんぎょう−産業、し−市、しみん−市民、すすむ−進む、せいさん(する)−生産、たのしむ−楽しむ、ちゅうし(する)−中止、ちょう−〜町、つづける−〜続ける、と−都、どんどん、ねぼう−寝坊、はじめる−〜始める、ばしょ−場所、はやし−林、ひかり−光、ひかる−光る、べつ−別、むかう−向かう、もり−森、ゆにゅう(する)−輸入、よう−様、れいぼう−冷房、アクセサリー、アジア、アナウンサー、アフリカ、アメリカ、ガス、ケーキ、けしゴム−消しゴム、コンピューター/コンピュータ*コンピューターから表記を変更、サラダ、スーツ、スーパー(マーケット)、テニス、ピアノ、レポート/リポート
★1級から
く−〜区、アンコール、ソフト、パート(タイム)*パートから表記を変更、パパ
★新たに追加
おつり−お釣り、かいぎしつ−会議室、かちょう−課長、だて−〜建て、ぶちょう−部長、スクリーン、ステーキ、チェック(する)、パソコン、ハンバーグ、レジ、ワープロ
【新たに2級になった語彙】
★3級から
テニスコート
★3級から
おいて−於いて、おかす−犯す、おそれ−恐れ、かい−〜海、かい−〜界、がたい−〜難い、けいき−契機、こめる−込める、せんきょ−選挙、そう−沿/添う、ぞう−像、でんごん−伝言、とう−問う、とって−(〜に)とって、ともなう−伴う、はんする−反する、ふたん−負担、ようし−用紙
★新たに追加
あげる−揚げる、おうだんほどう−横断歩道、きゅうこん−求婚、しゃどう−車道、ちょうかん−朝刊、でんたく−電卓、とく−得、オリンピック、メール/eメール/Eメール、ライト−(光)
【新たに1級になった語彙】
★2級から
おこたる−怠る、かくべつ−格別、てごろ−手頃、ひかげ−日陰、やたら、よみがえる−蘇る
★新たに追加
あいつぐ−相次ぐ、あかし−証、がいよう−概要、きそう−競う、きょうち−境地、けつじょ−欠如、こうたい−交代、こうはん−後半、さまよう、さんちょう−山頂、しこう−試行、しゃざい−謝罪、しんねん−信念、しんろ−進路、ぜんはん−前半、そうしつ−喪失、つぐない−償い、ていり−定理、とまどい−戸惑い、ひろう−披露、ひんけつ−貧血、べっきょ−別居、へんきゃく−返却、ほろぶ−滅ぶ、まんせい−慢性、みちばた−道端、も−喪、もふく−喪服、よくじつ−翌日、わかもの−若者、ライバル
【削除になった語彙】
★4級から
ゆう−言う
★3級から
あさねぼう−朝寝坊、おうせつま−応接間、べつに−別に
★2級から
いけない、うわ−上、こないだ、さきに−先(に)、ほんと−本当、オーバーコート、サンドウィッチ、ダイヤグラム、ドア−、ノー−(否)、バック、バンド−(ベルト)
★1級から
いちべつ−一別、きだて−気立て、こうふく−降伏、アワー、イエス−(はい)
【あいさつ語等の表現一覧】
一部、下記のように表記が改められたものもある。〈 〉内は旧表記。
◎4級
(どうも)ありがとうございます・ました〈どうも・ありがとうございます/ました〉、いただきます、いらっしゃい(ませ)〈いらっしゃい・ませ〉、(では)おげんきで、おねがいします、おはようございます、おやすみなさい、ごちそうさま(でした)〈ごちそうさま・でした。〉、こちらこそ、ごめんください、ごめんなさい、こんにちは、こんばんは、さよなら/さようなら、しつれいしました、しつれいします、すみません、では、また、(いいえ)どういたしまして、はじめまして、(どうぞ)よろしく
◎3級
いってらっしゃい〈いっていらっしゃいは削除〉、いってまいります、おかえりなさい、おかげさまで、おだいじに、おまたせしました〈お待たせしました。〉、おめでとうございます、かしこまりました、それはいけませんね、ただいま、よく、いらっしゃいました
◎2級
ありがとう〈(どうも)ありがとう〉、いってきます〈いってまいります/いってきます〉、おかえり。〈おかえり(なさい)〉、おかけください、おかまいなく、おきのどくに、おげんきですか、おじゃまします、おはよう。〈おはよう(ございます)〉、おめでとう〈おめでとう(ございます)〉、おやすみ。〈おやすみ(なさい)。〉、おせわになりました、おまちください、おまちどおさま、ごえんりょなく、ごくろうさま、ごぞんじですか
◎1級
ごらんなさい
【外来語で見出し語表記が変わったもの】
改訂後の表記−改定前の表記の順。なお、「キロ(グラム)」のように、記載してある場合は、「キロ」と「キログラム」の両方を採用している。「コート(overcoat)」のように記載してある場合は、「コート」の意味が「overcoat」であることを示している。また、「バッグ/ハンドバッグ」と記載してある場合は、「バッグ」と「ハンドバッグ」の両方を採用していることを示す。
◎4級
キロ(グラム)−キロ[キログラム]、キロ(メートル)−キロ[メートル]、コート(overcoat)−コート、ドア−ドア/ドアー
◎3級
オーバー(overcoat)−オーバー、コンピューター/コンピュータ−コンピューター、パート(タイム)−パート
◎2級
ウエートレス/ウエイトレス−ウエートレス、カセット(テープ)−カセット、センチ(メートル)−センチ/センチメートル、ダイヤ(diagram)−ダイヤ/ダイヤグラム、バッグ/ハンドバッグ−バッグ
◎1級
インフォメーション−インフォーメーション、ウイルス−ビールス、オートマチック/オートマティック−オートマチック、ティッシュ(ペーパー)−ティシュペーパー、ロマンチック/ロマンティック−ロマンチック
【形容動詞等で見出し語表記が変わったもの】
改訂後の表記−改定前の表記の順。
◎4級
はじめ−はじめ(に)、ほんとう−ほんとうに
◎3級
きゅう−きゅう(に)、そんな、そんなに−そんな(に)
◎2級
あたたか−あたたかな、おも―おもな・に、かって―かってに、しかくい―しかくい・な、しぜん―しぜん(に)、にわか―にわか(に)、めった―めったに、つい、ついに−つい(に)、わりに・と−わりと・に
◎1級
おおまか−おおまかな、すみやか−すみやかに、つぶら−つぶらな、むやみ−むやみに、やたら−やたらに・と、ろく−ろくな・に
【語彙表留意点への補足】
1・2級語彙表の留意事項(『出題基準』p.116−118)の(16)に以下の文言を補足する。
「複合語については、当該級の語彙の組み合わせにより出題されうる。ただし、各級の語彙の結合によるすべての複合語が当該級にふさわしいと認めるものではない。慣用句についてもこれに準ずるものとする。」
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