この稿は昨年の12月14日に行われた大学などの高等教育機関と日本語学校の意見交換会の記録である。そこでは長時間にわたって高等教育機関ならびに日本語学校にとって興味深いテーマについて真剣な話し合いが行われた。前号に続いて、いくつかのテーマにまとめてその概要を報告する。
■11年卒について
荒木:11年卒の問題に移ります。11年卒を大学で受け入れてもらえないかということです。これは飛び級の問題とも関連しますが、いかがでしょうか。
拓殖大:本学では11年卒は現在は認めておりません。ただ、準備教育課程を設けておりますので、そちらの方への入学をお願いしております。
東京女大:今のところ、出願資格は12年課程を修了していることが条件です。
荒木:中国には大専があります。例えば、もう一年間、短大とか専門学校などで勉強した場合、入学を認めるのかどうか。大学院の場合もあわせておうかがいします。
東京女大:出願資格はやはり12年というのが一応の通念です。
荒木:日本で1年間とか2年間、短大や専門学校で学んだ場合はどうでしょう。この場合は、12年以上になるわけですね。いかがですか。
東京女大:いくつかの指定された学校は例外的にありますが。そういうケースがございましたら、お問い合わせをいただいて個別に対応したいと思います。
慶応大:11年の問題については、はっきり法令で決まっております。11年の制度の国の出身者は大学に入れないということです。入るためには、文科省指定の準備教育機関で12年の学歴を得る必要があります。
鎌田:日本語学校の質問と意図は、こういうことです。ご指摘のように文科省ではそのように11年卒の指導をしています。ところが学校教育法をよく読むと、入学者は学長権限で、文科省の権限ではありません。厳密には11卒は入れてはいけないとは、学校教育法には書いていません。
一方では文科省が飛び級を認めて、大学や大学院への飛び級を現実にやっています。ご出席の先生方の段階でお答えできる問題ではないと思いますが、ぜひ日本語学校がそのような問題意識を持っているということを、学校にフィードバックし、検討していただけないでしょうか。
旧イギリス植民地系の国では11年卒の学制の国は結構あります。また、日本でも戦前は11年卒で、旧制中学は11年卒です。ですから後期中等教育が11年で完結している、とその国が言っているわけだから、それはそれでいいではないの、ということです。
それから大学院についても、中国の場合、専科大学は3年制です。そうすると、日本の大学院に入るのに1年足らないということになりますが、現実に飛び級があって大学3年卒で大学院に入っています。大学にぜひご検討いただたいことです。
発言者不明:大学院は、かなり柔軟になってきていると思います。
発言者不明:研究生を1年やることで大丈夫な場合もあります。
発言者不明:大学によりますけど、大学によってそれは考えられることです。
■原本返却について
荒木:願書提出時に、卒業証書の原本提示や成績証明書などの提出があります。不合格の場合、書類を返却してくれませんが、自国から取り寄せるのは大変な国もあります。それについては、いかがですか。
千代田学園:一度お預かりした書類は不合格の場合も返却をしておりません。
上武大:今のところは返却していません。ただ、書類審査という制度がありまして、この場合は、不合格の場合は書類を返しております。
桐蔭横浜:不合格者については、適宜対応します。基本的には返さないということになっておりますが、その都度個別に対応すると考えていただければよいかと思います。
■保証人について
荒木:在日身元保証人はなぜ必要か、また、その責任範囲はどうかという問題についてはいかがですか。
ハリウッド美容:本校は日本人とまったく一緒ですから、必ず保証人が必要です。経済的な面の責任ほとんどないと考えています。ただし、欠席、遅刻など、どうしてもだめな場合は、保証人との二者面談をします。また、年に二回、成績の報告と出席の状況を書面で保証人にお送りしています。
高橋:成績などの連絡先として、在日の保証人が必要な大学もあるようですが。
慶應大:出願の段階では、大学によって違うと思います。慶應の場合、出願の際は要りませんが、入学の際は日本人と同じに保証人が必要です。
高橋:在日の保証人ですか。日本人でなければまずいですか。
慶應大:日本人でなくても、外国籍の方でも構いません。ただ上智や慶應大の場合は、日本国内の方に限定しています。
高橋:中国の学生の場合、中国に住んでいる親御さんではだめなんですか。
慶應大:中国在住ではだめです。しかし、その親御さんが日本に来ていれば大丈夫ですが。
高橋:それは、何か理由があるんですか。
慶應大:連絡がとりやすいからです。
高橋:今はこういう時代ですから、国境はないと思いますけれども。
慶應大:中国は、まあまだということで…。
高橋:中国の学生の場合、お父さんに直接文句を言われたら学校に行きます。それくらい親の権威はあります。間に形式的な保証人を入れたとすると、余計わけがわからなくなり、問題が複雑になるのではないでしょうか。ただ単に学校が責任回避するためだけにやってるとしか思えないのですが。
慶應大:本当に実際何かあったときに、中国にまで出向いていくというのは、まだ難しいと思います。
横浜国際教育学院:保証人制度は、あまり意味がないと思います。というのは、保証人がいても学校に来ない学生が多いですから。最終的には、国外に住んでいても親が顔を出して解決していく問題だと思います。
サム教育学院:保証人制度というよりは、学生をどう管理するかという部分と、法的な責任という部分があります。法的には、文科省の意向として、保証人はいらないという見解がもう出ておりますので、あとは高等教育機関の皆さん方が学内でどう処理するかという問題だと思います。
荒木:この問題については、もし日本語学校の校長先生が保証人をやってる状況であれば、何か問題があったときには、日本語学校と連絡を密にすれば解決できることだ、という感じがします。保証人制度ということで、いろいろな所に頼み歩かせるのも、学生がかわいそうだなあ、という感じがしております。そういう意味では日本語学校のの推薦と保証というのは一体というような気がします。その辺のところ各学校でぜひお考えいただきたいと思います。 (文責:鎌田)
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