『学校基本調査速報』によると、14年度の専門学校の学生数は、65万9,780人で前年度より1万6,887人(2.6%)の大幅な増加となっている。今回は、修業年限別の学生数と、それをさらに分野別に分けた学生数について前年度と比較して見てみたい。
なお、次ページの表は、文部科学省の分類のうち、第6分野を「商業実務・外国語」とし、第8分野の「外国語」と「通訳・ガイド」を加えて集計している。
専門学校全体では、上記のように1万6,887人も増加しているために、修業年限「1年1ヶ月以上1年11ヶ月未満」を除いていずれの区分でも大幅な学生数増となっている。特に、2年以上の3区分で大幅な増加が見られ、この3区分では1万4,861人の増であり、これは全体の増加の88.0%を占めている。このことを見ても、専門学校の学生数の増加は修業年限の延長によるところが大きいといえそうだ。
■分野別に見た修業年限別学生数
<工業関係>
近年のゼネコン不況などの影響により、前年度比3,229人という大幅な減少となっている。これは前年度に続いた傾向で深刻な工業分野の現状を物語っている。特に、全体の78.7%を占め、主力学科が多く存在する修業年限「2年〜2年11ヶ月」の2,629人減が分野全体の足を引っ張る形となっている。また、専門学校全体では2年以上の学科で増加となり、修業年限の延長傾向が見られるにもかかわらず、この分野は、「3年〜3年11ヶ月」で若干の増加が見られるものの、3区分合わせてみれば、3,054人の減少となっている。
<農業関係>
もともと学生数が少ない分野であり、かつ年度によって大きな変動のないのがこの分野の特徴である。前年度より72人の若干増となっているが、この程度の変動は例年見られる現象である。
<医療関係>
少子高齢化などの社会的背景もあって、学生数を好調に増やしているこの分野は、14年度も6,180人の大幅増となった。特に、医療技術系や東洋医学系の学科の新設が多く、これが学生数の増加に大きく寄与している。
最も学生数が多いのは、修業年限「3年〜3年11ヶ月」で、前年度比4.3%(実数にして5,407人増)の大幅増となっている。「4年以上」でも前年度比6.2%増(実数にして2,660人増)と大幅な増加となった。
医療技術が高度化していることの他に、大学・短期大学の同系分野への進出などの影響を受けての修業年限延長と思われる。
<衛生関係>
近年の美容系学科の新設ラッシュにより、全体の学生数は5,170人(7.2%)の大幅増となっている。特に、2年以上の3区分はいずれも増加しており、合わせて5,156人の増加で
、全体の増加の99.7%を占めており、圧倒的な増加率となっている。
これらは美容系(2年制)の学科新設のほか、調理系学科の1年制から2年制への移行も増えていることが影響しているものと思われる。
<教育・社会福祉関係>
ここ数年続いた大幅な学生数増も今年度は一転して減少に転じた。実数で226人の若干減ではあるが、近年のこの分野の推移から見れば大きな転換期を迎えているといえる。これは、学科区分でいえば、介護福祉、社会福祉を主力とした「その他」の減少によるもの。
したがって、修業年限別でも、5つの区分の内、3つで増加、2つで減少となっており、また、増減の数はいずれの区分でも大きくはなく、分野全体が勢いを失いつつある状況となっている。
<商業実務・外国語関係>
最初に示したように、文部科学省の分類では第6分野を「商業実務」としているが、弊社では実態に合わせて、第6分野を「商業実務・外国語」としており、第8分野の「文化・教養」のうち「外国語」「通訳・ガイド」を第6分野に加えている。
全体では学生数がしばらくぶりに増加した(2,822人、3.7%増)。3年以上で学生数が減少、それ未満で増加という、他の分野とは異なった結果となっている。この分野は修業年限の延長傾向にはないことがわかる。
<服飾・家政関係>
10〜12年度にかけて、学生数の若干増があったが、今年度は13年度に続いて学生数は減少した(2,143人、6.6%減)。特に、修業年限2年以上の3区分では軒並み減少している。この分野の主力学科は、ほぼこれらの区分にあるので、この分野も深刻な状況にあるといえる。
<文化・教養関係>
全ての区分で増加し、全体では8,241人(9.2%)の大幅増で、専門学校全体の増加の約半数をこの分野だけで占めている。
特に、主力学科が多く存在する「2年〜2年11ヶ月」の増加は大きく、6,227人の増加となっている。学科別に見ても特に大きく増えたという区分はないが、ほぼ全ての学科区分で増えているという特徴がある。
■教育内容に合わせた修業年限設定を
学生数のピークであった5年度は修業年限「1年」の学生数が、5万3,013人で全体の7.6%であったのが、14年度には37,013人で全体の5.6%にまで縮小している。
2年以上の区分で増えた分野と減った分野をもう一度整理すれば、増えたところは農業、医療、衛生、商業実務・外国語、文化・教養で、逆に減ったところは工業、教育・社会福祉、服飾・家政となっている。特に、教育・社会福祉の動向が気になる。
職場における専門職の役割は年々、高度化、複雑化する傾向にあるが、だからといって、専門学校の学科の修業年限は延長すればよい、というものではない。修業年限の長短が必ずしも教育効果に比例するとは限らないからだ。しかし、その一方で社会の動向に敏感に反応し、柔軟に対応できるのは専門学校の大きな特徴のひとつである。学科によっては、適宜修業年限を見なおすこともまた必要であろう。(鎌田)
|