文部科学省の「大学評価・学位授与機構」(木村孟機構長)は、このほど国立大学の教育研究内容に関する評価結果を公表した。内容は全学テーマ別評価「教養教育」、「研究活動面における社会との連携及び協力」、「分野別研究評価」、「分野別教育評価」の4種類。
そのうち「教養教育」の評価では、学部のある全95大学のうち3割にあたる28大学が、5段階評価の下から2番目にランクされる「改善の必要が相当にある」とされ、大学の教養教育の存在意義が問われる結果となった。同機構の評価結果公表は、昨年に続き2回目。
■28大学が「下から2番目」
大学の学部段階における教養教育は、大学設置基準により「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するための教育」と位置付けられている。学校によって異なるものの、一般的に大学生活の始めの2年間にわたって行われており、戦後日本の大学教育における大きな特徴の一つとなっている。
同機構では、各大学を対象に「教養教育のとらえ方」「教養教育の目的及び目標」「教養教育に関する取り組み」などの項目について全国立大学を対象に調査を行った。
調査の結果、「実施体制」「教育課程の編成」「教育の方法」「教育の効果」の各項目について評価を行った。教養教育への大学の組織的な取り組みをみる「実施体制」の項目では、東京芸術、大阪外国語、大阪教育の3大学が「改善の必要が相当にある」とした。
また、学生が授業をどこまで理解しているかや、卒業生を受け入れた企業からの評価などを総合した「教育の効果」の項目では、その「効果が十分にあがっている」とする最上位から、最下位の「効果があがっておらず、大幅な改善の必要がある」まで5段階で評価した。 その結果、東京大学など4校が2番目に良い「目的及び目標で意図した実績や効果がおおむね挙がっているが、改善の余地がある」という評価だったが、63校が3番目の「改善の必要がある」、28校が下から2番目の「ある程度達成しているが改善の必要が相当ある」との評価を受けた。
「改善の必要が相当ある」とされた大学のうち、筑波大では「教養教育を軽視する学生がいる」と指摘された。東京農工大は「一部の学科の学生の成績に偏りがみられる」ことを指摘された。
■研究機関としては充実
一方、全学テーマ別「研究活動面における社会との連携及び協力」の評価結果における「取り組みの実績と効果」の項目では、93%の大学・機関が、目標を「十分」あるいは「おおむね」達成したと評価された。
法学系、教育学系、工学系の3分野について、それぞれ6大学(機関)を選んで、研究水準を4段階評価した「分野別研究評価」でも、「おおむね達成」の評価が大半を占めており、研究機関としての大学については、高い評価が得られている。
今回の評価結果に関して最も着目すべきは、「教養教育」の改善の必要性だろう。1990年代から続いている不況の影響で、専門学校の進学率が上昇するなど、高校生の実学志向が高まっている。そうした状況の中、専門学校と違った特色を打ち出すことのできる「教養教育」の分野で、約3割の国立大学が“ダメだし”をされ、学生に外国語能力が身に付いていないなどとして厳しい評価が続出した。
■「教養教育」に一層の危機感を
これに対し、今回の評価では、研究機関としての大学は高く評価された。日本の大学が、研究者を養成することよりも、サラリーマンを養成する役割が大きいことを考えると、以下のことがいえるのではないだろうか。つまり、研究機関としての側面に予算を集中するあまり、将来、社会の大半を占める一般のサラリーマンを目指す学生達に対して、授業料に見合った教育が十分になされていないのではないだろうか。大学に高い授業料を払って4年間を過ごす、そのほぼ半分の期間を占める教養教育の現状について、大学側はもっと危機感を持つべきではないだろうか。(石田)
【教養教育の「効果」について「改善の必要が相当にある」とされた大学】
小樽商科大/帯広畜産大/北見工業大/図書館情報大(現筑波大)/筑波大/埼玉大/東京医科歯科大/東京農工大/東京芸術大/信州大/岐阜大/静岡大/豊橋技術科学大/滋賀大/滋賀医科大/大阪外国語大/奈良女子大/鳥取大/島根大/島根医科大/愛媛大/高知大/九州工業大/佐賀大/佐賀医科大/大分大/宮崎大/宮崎医科大
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