「高等学校を卒業しなくても大学、専門学校に入学できる」、「大検に合格していなくてもよい」。
文部科学省は従来の方針を大きく変えて来春から上記のように、大学や専門学校の入学資格を緩和することになった。別な言い方をすれば、誰を受験させ、誰を合格させるかは大学や専門学校(の校長)にまかせる、ということでもある。
実はこれは長年の懸案であった。昭和51年施行の、俗に「専修学校法案」といわれる学校教育法の改正時にも大きな問題となったものであり、また、昨年来、一部の外国人学校(インターナショナルスクールなど)に大学入学資格を与えた時にも問題になったことでもある。
現在、インターナショナルスクール、韓国人学校、朝鮮人学校などは、わが国の学校教育法上では第83条に規定されている「各種学校」としての扱われている。国内の普通の高等学校が第1条に規定され、いわば正規の学校とすれば、後期高等教育機関としての位置付けのない単なる学校、という扱いである。
■日本語学校に11卒でも入れる!?
この新しい施策は単に国内に存在する各種学校としての外国人学校の問題にとどまらず、日本語学校にとっても大きな問題を含んでいる。日本語学校業界で長年の懸案である「11卒」の問題と絡んでくるからである。
冒頭の「高等学校を卒業していなくてもよい」ということは、大学や専門学校への入学に際しては、必ずしも学校教育12年を終了していなくてもよい、ということでもある。このことは、国内では10卒や11卒でも大学に入れることであり、国内で10卒や11卒を認めて海外では認めないという不合理なことにならないか。
海外では、旧イギリスの植民地を中心に後期高等教育(高等学校)までの修業年限が11年という国は多い。また、わが国の高等学校進学率97%超は決してわが国だけの数字ではなく、ほぼ全世界的なものである。つまり、高等学校教育は義務教育ではないが、半ばどこの国でも義務教育化しているということである。 義務教育は、それぞれの国の将来をになう若い人々を教育する制度の原点であるとすれば、半ば義務教育化しているそれぞれの国の高等学校教育もその範疇に含まれる。極論すれば、義務教育はそれぞれの国、民族固有の文明であり文化でもあるといえる。何人もそれをうんぬんする権利はないことは当然のことである。わが国も戦前の旧制中学は11卒であり、この11卒の規定は、これら旧制中学卒者を救済する措置であったはず。それがいつの間にか、11卒を差別する規定となってはいまいか。
現在、我が国の日本語学校の学生の70%は中国1か国に依存しており、諸外国と比較しても、かなりいびつな出身国構成となっている。そんなことできるの?と、揶揄された「留学生10万人計画」は達成された。
世界に大きく開かれた高等教育機関、日本語学校とするためにも、この新しい文部科学省の施策を、さらに一段とステップアップしてほしいものである。(鎌田)
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