東京都では、都立４大学を統合して平成17年４月に発足させる新大学の基本構想をまとめた。同構想では、新大学は「大都市における人間社会の理想像を追求する」（都大学管理本部）ことを目的とし、既存の学問体系にとらわれない新しいタイプの学部を設置。キャンパスを都心方面に展開することも検討し、東京ならではの新しいタイプの総合大学を目指す。都では、優秀な高校３年生に教養講座をして、そのまま大学に迎え入れる制度も検討しており、人材の長期間にわたる育成にも力を入れる方針だ。
基本構想は、平成13年11月以降に策定された「東京都大学改革大綱」以降(1) 工業等制限法の廃止に伴う区部等における規制の撤廃
(2) 都が国に要求してきた公立大学等を法人化するための地方独立行政法人法の制定 (3) 知的財産の創造や活用について大学の責務をうたった知的財産基本法の制定など、大学をとりまく状況の変化にも対応してまとめられた。
同構想では、(1) 都市環境の向上 (2) ダイナミックな産業構造を持つ高度な知的社会の構築 (3) 活力ある長寿社会の実現、を新大学の教育研究の目的と位置付けると同時に、教養教育においても、文化、経済、技術が集積する東京でしか学べない「都市の文明」をテーマにした人間教育を実践するとしている。
■「都市環境学部（仮称）」など設置
統合後の学部再編については、南大沢キャンパス（現都立大学）に「都市教養学部（仮称）」（人文・社会系／法律・経済系／理工学系）と「都市環境学部（仮称）」（環境・物質化学／建築・土木／観光・ツーリズム）の両学部、日野キャンパス（現科学技術大学）に「システムデザイン学部（仮称）」（メカトロ・情報・航空宇宙など応用工学系／メディア・アート／産業系デザイン）、荒川キャンパス（現保健科学大学）に「保健福祉学部（仮称）」（看護・放射線等／社会福祉等）を設ける。日野キャンパスの学部の１・２年次、荒川キャンパスの学部の１年次は南大沢キャンパスで教養教育が行われる。
また「単位バンク（仮称）」という仕組みを作り、バンク内の「カリキュラム評価委員会」が認定した他大学や海外の大学の科目や国際経験（青年海外協力隊など）を、新大学の卒業単位として算入。修業年限も４年間の「オーソドックス型」だけでなく、修士まで５年で卒業できる「特急（飛び級）型」、長期間にわたる履修ができる「中断・再開型」も想定している。
全寮制の「東京塾（仮称）」も設ける。同塾では、塾長と学生の交流・対話、アジアの留学生との交流などを通じて、現代に適合した人間教育を行う。
■優秀な高校３年生を“スカウト”
都では、教養講座「東京未来塾」を受けた優秀な高校３年生を新大学に入学させることも検討している。日本の将来を担いうる「改革型リーダー」を長期間に渡って育成することが目的。校長推薦などがある都立高３年生約50人を対象に、第一線で活躍する社会人・大学教員などによる特別講義・ゼミナール、産業現場での体験実習などを行う。
講座は１年間のコースで、高校の授業と重ならないように工夫しながら、夏休みなどを利用して100日程度開く。講座を最後まで受けた生徒は、原則として無試験で新大学に受け入れる方針だ。
「大都市ならではの大学」を目指す新大学。構想どおりに従来の枠を超えた大学になることが期待される。（石田）
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