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タイトル
2004年2月号より

平成15年度学校基本調査報告書より 分野別分析  その2 医療
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分野全体で4年連続の入学者数増「医療の高度化」「癒しを求める」時代状況の順風を受ける

 前号に引き続き、専門学校を分野別に見ていく。今回は第3分野の医療。データは、前回同様に文科省の「学校基本調査報告書」の50分類によるもので、この資料をもとに平成4年度からの12年間の定員数・入学者数を中心にその推移を見ていきたい。

■12年間安定して拡大

 第3分野(医療)の大きな特徴は、看護科を筆頭にそのほとんどの学科が国家資格関連であることである。そのために、専門学校全体が入学者数のピークを迎えた後も、経済不況に伴う就職難、ライセンス志向などの追風を受けて順調に入学者数を増加している学科が多い。

 医療全体の入学者数を見ても、年度によって若干の増減はあるものの、全体としてはこの12年間安定して成長を続けている。専門学校全体が縮小を続けている中で、これは異例の分野といえる。

 この分野は国家試験関連学科ということで、入学者数が定員を大幅に上回ることは制度上できにくい。したがって、他の多くの分野が充足率を極端に悪化させているのに反して、この分野は平成元年度以降の充足率は94.0%〜101.7%の間を上下し、他の分野には見られない高いレベルを維持している。このこともこの分野の大きな特徴といえる。しかし、この定員と入学者数の年度ごとの乖離に注目をして見てみると、10年度に約4,000人に上った定員と入学者数の乖離は、11年度は約3,200人、さらに12年度には約2,200人と小幅になったにもかかわらず、14年度は3,300人強に戻り、15年度は約4,700人と乖離の幅が大きくなった。これは各分類ごとの人気、不人気に格差が出てきたからであり、今後注意深く見ていく必要がありそうだ。

 男子の入学者数は2,073人増 入学者数を男女別に見ると、男子の入学者の増加が目立つ。専門学校全体の入学者数のピークであった4年度を100として計算した対4年度比入学率を見ると、全体では34.7%の増加(実数にして1万9,091人増)であるが、男子は4年度と比較して140.6%増(同1万2,773人増)、女子は13.8%増(同6,318人増)であった。この両年度の男女比を見てみると、4年度では男子が全体の16.5%に対して女子は83.5%、15年度は男子が29.5%に対して女子は70.5%となっており、男子の割合は13ポイントも上昇している。 以下、文科省の分類(前ページの表の学科コード抜粋を参照)にしたがって各分類ごとの傾向を見てみよう。

★301 「看護」

 この系は学生数では、専門学校全体の14.0%(実数で96,155人)を占める巨大な系である。医療関係分野のなかでも約半分以上の割合を占めている。

 この系は専門学校全体のピークとは異なり、入学者数は8年度がピークであった。以降、10年度に若干の増加はあったものの、11年度以降5年連続で減少となっている。後に見るように、いくつかの要因をあげることができるが、順調に拡大を続けてきた看護系は、いま大きな転機を迎えている。

 そんななかで、医療分野全体の動きと同様に、この系でも男子の進出が目立つ。2年度以降一度も減少することなく、数は少ないものの男子の入学者は微増し続けており、15年度は女子が減少したにもかかわらず、男子は91人増加した。

 年度ごとの定員数と入学者数の乖離を見てみよう。看護師が「3K」の一つといわれて敬遠されていた時代であった2年度までは定員割れが見られた。その後、バブルの崩壊による経済不況で、就職氷河期となった時代である8年度までは、すべての年度で定員を超えていた。そして医療技術の高度化、看護師の能力向上が叫ばれるようになり、大学・短期大学などでの看護系学科の新設ラッシュが始まった9年度からは、再び定員割れという推移を辿っている。

 しかし、この程度の入学者数の減少・定員割れは、近年の公立の看護系大学・短期大学の新設ラッシュを考えれば予想されたことといえる。問題は、専門学校の看護科が大学・短期大学の看護科との住み分けを見通した特色を打ち出せるかどうかにかかっているといえよう。

★302 「准看護」

 本来ならば、高等課程(中学校卒対象)に属する学科であり、専門課程として設置している学校はごくわずかである。また、准看護師の養成校自体も廃止、あるいは看護科へ移行する傾向にある。そのため、独立した一つの分類として見ることは意味をなさず、専門学校としては、「その他」に分類すべき学科といえる。

★303 「歯科衛生」

 この系は4年度の第1次ピークを迎えた後、若干の減少傾向を示し、8年度に再びピークとなった。そして12年度以降に8年度並みにまで回復するというように、他の系にはあまりみられない特異な動きを見せている。昨年度まで6,000人台を常にキープし安定しており、15年度は8年度を上回る6,965人が入学、3度目のピークを迎えた。

 以前は女子のみの募集しか行わない学校がほとんどであったが、近年、共学制に変えて積極的に男子の志望者を受け入れる学校も増えてきた。しかし、15年度の男子入学者数は実数で9人とわずかな人数にとどまった。

★304 「歯科技工」

 7年度にピークを迎えたこの系は、8年度からは減少傾向に転じた。11年度に若干の微増はあったが、再び12年度、13年度には減少、14年度は一転して30人増加したが、15年度は再び87人の減少となった。全体的に見ると減少傾向にあり、15年度は7年度ピーク時の約78%の規模にまで縮小している。

 入学者数3,000人規模で留まればよいが、ここ5年間のこれらの動きから推測すると、微減と微増を繰り返しながら、少しずつ規模が小さくなっていく危険性がなくはない。今後の推移を注意深く見守りたい。

★305 「臨床検査」

 医療分野のなかではめずらしく、専門学校全体と同じく4年度が入学者数のピークであった。その後は、例外的に微増することもあったが概ね縮小傾向にあったが、15年度は実数で119人増、ピーク時に比べても93%にまで回復した。大学・短期大学にも類似の学科があり、競争が激しい系だが、競争力をつけた専門学校が巻き返しに出ている可能性もあり、この後の動向が注目される。

 また、定員数と入学者数をみると、専門学校全体では大幅な定員割れが続いているのに対して、この系は3年度以降11年間連続して定員以上の入学者を集めており、根強い人気があることがわかる。医療の高度化とともに需要が高まっていることを背景に、生徒集めにはさほど苦労していない現状がうかがえる。

★306 「診療放射線」

 入学者数がほぼ1,000人規模で、一つの分類として見るには規模が小さい。そのために、実数でのわずかの増減が比率で見ると敏感に変わることになる。しかし、ほぼ入学者数は1,000人を維持しており、15年度も対前年度比41人増を記録、全体的には安定しているといってよい。

 男女別に入学者数を見てみると、2年度の入学者の男女比は男子9割に対して、女子は1割であった。これが、15年度では女子が2割弱を占めており、この系への女子の進出が続いている。また、「臨床検査」系と同様に、この系も4年度以降、入学者数が定員数を上回っており、根強い人気があることがわかる。

★307 「はり・きゅう・あんま」

 実数で1,769人増、比率で対11年度比94%増と2倍近くになり、4年連続の大幅な入学者増となった。これは、12年度にこの系の学科が数多く新設されたことによるもので、新設による定員増と入学者増の両面での拡大が続いていることが分かる。定員が増加するのに正比例して入学者数が増加する状況が続いており、今や医療分野全体を牽引する系に成長しつつあるといってよいのではないだろうか。

★308 「柔道整復」

 15年度は入学者数736人増と4年連続の増加となった。これは、前項の「はり・きゅう・あんま」と同様、新設校(学科)の増加に伴うものであるが、新設すればそれに比例して入学者が増えている。 この系は、「はり・きゅう・あんま」同様に、大学や短期大学に類似の学科がなく、専門学校らしい学科群といえ、“癒し”を求める時代状況に合致して、今後も成長を続ける可能性がある。今後も注意深く見守るべき系であろう。

★309 「その他」

 「その他」のなかにある医学技術には、理学療法、作業療法などの学科に加えて、言語聴覚、視能訓練、義肢装具などの国家資格関連の学科が含まれており、高齢者対象のリハビリ関連の人気の高さを物語っている。 この系は、5年度に一度入学者数が減少したが、その後は9年連続で順調に拡大を続けている。15年度には、14年度に引き続き、専門学校全体のピークであった4年度の2倍以上の入学者が集まった。理学療法、作業療法の学科を新設する専門学校も依然多く、今後も堅調な動きをみせるものと思われる。 ただし、この系の学科は大学や短期大学に類似の学科があること、6年度を除いて定員割れの状態が続いていることなど、問題がないこともない。

■「医療の高度化」と「癒し」に対応

 表題にもあるように、医療分野全体が4年連続で増加した背景には、「医療の高度化」と「癒しを求める時代状況」があげられるだろう。従来この分野を支えてきた看護系や歯科技工系に代わり、理学・作業療法などが含まれる「その他」の系の増加は「医療の高度化」に、「はり・きゅう・あんま」、「柔道整復」系の増加は「癒しへの時代への対応」と位置付けることができるからだ。

 一方、これまで医療分野全体の動向に大きな影響を及ぼしてきた「看護」は、大学・短期大学に次々に看護系学科が新設され始めたのとほぼ同じ時期に入学者数のピークを迎え、規模を縮小し始めた。また、すでに医療系短期大学に同種の学科が設置されている「歯科技工」「臨床検査」、15年度は再び増加に転じた「歯科衛生」ついても同様なことがいえる。これらの系については、どう「専門学校らしさ」を盛り込むのかが今、問われているといえよう。

 最近、医療現場で働くスタッフによる事件、事故が数多く発生し話題となっている。これらは技術的な単純ミスだけではなく、そのミスにいたる業務管理の問題でもある。また、これらは責任感の問題でもあるといわれる。「学問」を追究する大学・短期大学ではできない、実践に裏打ちされた「責任感」など、専門学校ならではの教育が求められているとはいえる。 医療の高度化などへの対応を続けながら、どう人間性を養っていくか。医療分野を抱える専門学校には、人間性と時代状況をトータルに見据えた学校運営が求められている。   (石田)




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