2月1日(日)、東京両国の国技館で二所ノ関部屋所属の元小結・大善関の引退相撲があった。これは、同時に富士ケ根親方襲名披露を兼ねたものであったが、これを関東周辺の日本語学校約30校の就学生・教職員約1600人が観覧した。
午前11時過ぎ、ふれ太鼓の合図とともにプログラムはスタートしたが、途中、十両土俵入り前と断髪式の間、2回にわたってNHKアナウンサーが務める司会者から外国人就学生が大勢来ていることが紹介されると、会場の観衆からは大きな拍手が寄せられた。
「国技だ」「日本の伝統文化だ」と相撲はいわれるが、ふだんの本場所は高い入場料金ということもあって就学生にはかなり敷居が高いのが実情である。同じことは日本人の教職員にもいえるらしく、今回観覧した多くの日本語学校教職員にとっても初めての国技館であったようだ。
また、ふだんの本場所は朝9時から夕方6時まで、ひたすら相撲の連続で、イベントらしいものといえば、横綱の土俵入りと最後の弓取り式くらいのものだ。また、テレビのように解説もビデオのリフレーンもないので、ちょっと余所見をしている間に一番が終わってしまうので、相撲に興味のない人にとっては単調で退屈なものといえなくもない。
しかし、引退相撲の場合は、多くのプログラムが盛り込まれていて観衆を飽きさせない。今回も、初めの「ふれ太鼓」に続いて「幕下力士選抜トーナメント選」があり、「相撲甚句」や「大善関相手の子供相撲」「幕下決勝正五番」の後は「十両土俵入り」「初切」「髪結い実演」と続き、「後援会長挨拶」で「断髪式」が始まった。断髪式そのものは、350人にもおよぶひいき筋による挟み入れで、2時間もの長時間延々と続くもので、メーンイベントのわりには、見ている人には一見退屈な時間といえなくもないが、ひいき筋には、ふだんテレビなどマスコミやスポーツの世界で活躍している人が多く、司会者が名前を呼び上げるごとに観衆からは大きな歓声があがっていた。 「断髪式」終了後は、「花束贈呈」「横綱綱締め実演」「櫓太鼓打分」に続いて「幕内取組」「弓取式」で終了となった。このように、引退相撲の場合は、たんなる相撲の取り組みばかりではなく、相撲にまつわる色々なプログラムが用意されているので、初めての相撲観戦者にとってはもってこいのプログラムといえる。
当日観覧した財団法人日本語教育振興協会の佐藤次郎理事長は「初めて相撲を見る就学生には有意義で面白い企画であった。次ぎの機会にはもっと多くの日本語学校の就学生にも、是非見せてあげたい」と観覧後に語っていた。
なお、今回の引退相撲の観覧は小社が企画したものだが、一部の日本語学校だけに呼びかけて行なわれた。それは、初めての企画であったことに加えて、昨年暮れからの一段と厳しくなった入管行政を受けて、今春の4月生の許可率に不透明感が漂い、そのために各日本語学校は一斉に緊縮財政に突入した最悪の時期であったからだ。通常よりは安い料金といっても学生の人数分を学校が負担するとすればかなりの金額になる。もっとも、今回は二所ノ関親方と大善関から、就学生ということで特別料金を提示してもらったので、低料金に押さえられたことが多くの日本語学校から受け入れられた理由かもしれない。日本語学校の対応もまちまちで、課外授業扱いのところや希望者だけというところもあった。また、料金についても、全額学校負担というところもあれば、学生から一部あるいは全部を徴収というところもあった。
今回、東京を中心に、埼玉、千葉、神奈川の他、長野、山梨という遠くの日本語学校を含めた30校から、1600人にもおよぶ就学生・教職員が観覧したことは特筆に価する。機会があれば、小社でまた企画したい。もちろん、その時にはすべての日本語学校にオープンにしたいと考えている。(鎌田)
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