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11号 (2011/4/25)
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【「日本語学校全調査」(専門教育出版)2011年版 分析】
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★学校数は431校に
「日本語学校全調査」は毎年2月に専門教育出版から出版されている。同誌は毎年1月末日現在で全国の大学・短期大学別科並びに日本語学校にアンケート調査をして同誌を刊行している。
今回は同誌と過去にエイ・アイ・ケイから発表された同誌の分析報告書を基に、定員と在籍数に絞ってその推移を過去8年間について見てみたい。
表1は「定員」と「在籍」で、それぞれ学校数、総定員(在籍者総数)、1校あたりの平均定員(1校あたりの平均在籍者数)、最高定員:定員の一番多い学校の定員(在籍者が一番多い学校の在籍者数)、同じく最低定員(最低在籍者数)の欄がある。「在籍」の項目のみ、これに定員充足率の欄を設けてある。
日本語学校の学校数はこの8年間では2004年が一番少なく347校で、以降361校、366校と増えたが、2007年には一転して355校に減り、以降また上昇カーブを描き、今年は431校になっている。一番数が少なかった2001年比で実数で84校、24%増となっている。
大学・短期大学の別科も2007年は41校であったが今年は57校に増えている。
★日本語学校の定員充足率に悪化の兆しが
表2は定員充足率の観点から表1を見やすいように作り直したものである。
総定員の推移を日本語学校で見てみると、2007年の65,220人が過去8年間では最低で、以降漸増して、2010年には7万人を、また、今年は8万人を超えて83,306人となった。大学・短期大学の総定員は2009年までは3,000人前後を推移していたが、日本語学校同様に、2010年には4000人台をまた、今年は5,000人をうかがう4,865人となっている。
在籍者数は、日本語学校では2006年が最低で36,980人、以降かなりの勢いで毎年増加しており、今年は56,840人であった。大学・短期大学の別科も同様で、この2年間4,000人台を維持している。
この定員と在籍者数の推移にともなって定員充足率も大きく変化している。日本語学校は最低が2006年の56.0%で以降4年間連続して定員充足率は改善をして2010年には70%を超えたが、今年は定員増に在籍者数が追いつかず、若干悪化して68.2%となった。
また、大学・短期大学別科は、日本語学校に比較して定員充足率はかなり高い水準を維持している。
なお、この定員充足率と学校の財務との関係でであるが、当然ことながら株式会社の多い日本語学校にとって、重大な問題である。定員充足率がどれくらいあれば学校経営が安定するのか詳しい資料・統計はない。しかし、大学の私学助成金が定員80%未満または120%超の学校は減額対象ということを考えれば、少なくとも大学の場合は定員80%を割り込むと危険信号と文科省が考えているわけで、これが一つの参考になろう。
ただし、日本語学校の場合は大学と違って事務局や教員スタッフが少ないので、この80%よりはかなり下の数値、70%くらいが、いわゆる損益分岐点と考えてよいのではなかろうか。
この観点から、日本語学校の定員充足率の推移を見てみると、今年の68.2%は微妙な状態にあるといえないだろうか。
■参考資料
○表1 学校種別 定員・在籍者数の推移
○表2 学校種別定員充足率の推移
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