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専門学校の「今」に鋭く迫る辛口コラム
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2000年11月号

調査 専門学校入学にさいしての県内進学と県間移動 (下)
  関口 義(京都文教大学教授)
専門学校入学にさいしての県内進学と県間移動 (上)」より続く

▼流出優位パターン その1 <埼玉、千葉、神奈川、兵庫>

 流出優位パターン諸県のうち、埼玉、千葉、神奈川、兵庫は大都市所在県か人口の多い県で、流入優位パターンを代表する東京と大阪に隣接し多くは通学圏内にある埼玉、千葉、神奈川のうち東京への流出推定数が最も多いのは埼玉、ついで千葉、神奈川であり、これは東京への集中規模がとりわけ大きいという実情から、これら3県の流出規模も特に大きくなっている。

 埼玉、千葉の両県とも現在では県内の専門学校は県庁所在地集中ではなく広く普及しており、県内の高校卒業生を迎え入れているが、量的規模としてはなお不十分で、それらを大きく上まわる進学者層が、東京所在の専門学校に進むという構図である。

 神奈川の専門学校も、東京に隣接する大都市の横浜を中心として発展、現在では相当規模に及び、大都市地区の立地特性を生かして発展しているものの、隣接する東京の集積力が一層高いために、同県の専門学校通学者に匹敵する程度の高校卒業生が東京の専門学校に進んでいる。専門学校入学者数にみるように、人口ででは少ない流入優位パターン県としての愛知が2万1000人、宮城が1万2000人に対し、神奈川は1万人である。

 近畿ブロックに位置する兵庫は、県庁所在地の神戸市をはじめ、同県南東部に位置する諸都市に人口が集中し、そこに多くの専門学校も立地し、集積力を高めている。県における専門学校進学者の多くもこれらの専門学校に進み、また近県を中心とした流入者もみられる。

 一方これら地区の多くは大阪とは通学圏内にある。両府県の入学にともなう地域移動は、首都圏における東京と神奈川の場合と同様に、集積力の一層高い大阪のほうが優位しており、同じく大阪に隣接する京都の場合とは異なっている。

▼流出優位パターン その2

 以上のほか33県に立地する専門学校は、入学生の大多数が自県高校卒業生で、在学時の専門教育を通して、各地域社会に必要な職業人養成に役割を果たしている。流出入の規模やその実情については、立地の県によって一様ではない。流出状況を中心に各ブロック・県により次のような特徴がみられる。

 東北は、青森、岩手、秋田、山形、福島で、各県とも県内進学は3分の1程度で、少数の県外からの流入を除くと、多くの流出である。ブロック内流出先は宮城、ブロック外流出先は主として東京である。流出規模の最も大きいのは山形で、福島、岩手がそれに次いでいる。

 北関東は茨城、栃木、群馬の3県で近年専門学校が発展し、地元の高卒生を対象としているが、なお東京等への流出組も多くを数えている。流出者数、流出数ともに大きいのは茨城である。栃木と群馬は、専門学校進学者はほぼ同数であるが、群馬のほうが自県残留率はやや高い。

 中部・東海は、新潟、富山、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重である。各県とも自県内進学が多く、他県からの流入は近県を中心に少数である。県外への流出先として東京が多くを占めるのは、新潟、山梨、長野、静岡である。新潟と長野は専門学校進学率が高く、流出者数は後者のほうが多い。

 山梨は自県進学者よりも流出者が上回る。静岡は自県進学者が流出者を上まわるとみられるが、東京への流出のほか西部地区を中心に愛知への流出が加わる。岐阜と三重は県内進学よりも他県流出が多いが、流出先は通学圏内に位置する愛知が多い。

 近畿は、大都市府県を除く滋賀、奈良、和歌山の3県であるが、いずれも京阪神の大都市地区に隣接し、専門学校進学にさいしての吸引力が大きいため、県をこえる通学を含め流出が大きい。3県のうち奈良は比較的に自県内進学と流入がみられるが、滋賀と和歌山は流出規模が大きい。主として京都、大阪等の隣接県の専門学校に進んでいる。

 中国は、広島を除く鳥取、島根、岡山、山口の4県で、このうち、鳥取、島根の両県は自県進学よりも、広島や岡山の隣接県や京阪神地区への流出者が多い。比較的自県進学率の高いのは岡山である。山口も過半数は流出とみられるが、九州地区の福岡へ進む者も相当数を占める。

 四国は香川、徳島、愛媛、高知の4県とも流出優位パターンで、自県進学のほか、他ブロックからの流入はわずかで、そのうち高知は自県充足型に近く、他の3県は京阪神地区を中心とした流出である。

 九州は、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の5県で、各県とも自県内進学のほか、流出が流入を大きく上まわる流入優位パターンでは共通している。ただ、これらのうち、自県進学が比較的大きいのは熊本、宮崎、鹿児島で、流出規模の大きいのは長崎と宮崎である。流出先として多くを占めるのは同ブロックの福岡と、大阪、東京などである。


 (注。この項の統計資料の数値からは、各都府県間の流出・流入数を直接示すデータは得られていない。この項の筆者の記述にさいしての説明は、以前から収集してきた個別専門学校の入学にともなう県間移動のデータ、及びその検討と考察に基づいている。)






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