洋服のデザインに流行があるように、消費者のニーズは絶えず変化しています。企業は、より多くの顧客を手に入れようと、消費者のニーズに合わせて新しい商品やサービスを提供しようとします。また、テクノロジーの進歩に合わせて新しい技術も次々に生み出され、実際の現場に導入されています。このように、最前線の現場の環境は常に変化し続けているのです。当然、専門学校もその変化に合わせた変化が要求されます。この項目では、学校の設備に注目してみましょう。
▼最新の設備と技術が入っているか
入学してから卒業するまでの間(平均的な専門学校のコースでは2〜3年)、現場の環境は随分と変わります。身近な例として、TVゲーム業界をあげてみましょう。TVゲーム業界は今や1兆円産業といわれるほど成熟し、今もなお成長している産業です。この業界を目指す専門学校生は多く、いわば花形産業の一つです。さて、ゲーム業界ではソニーのプレイステーション(PS)とPS2の独壇場になっているように見えますが、ほんの数年前までは、ゲーム機といえば任天堂のファミコンを指すほど、任天堂のシェアが高かった時期がありました。それから数年後、任天堂とセガが3DCGの描画が可能な新しいハードを登場させたのに引き続き、ソニーもPSをひっさげて市場に登場しました。そして、最近、任天堂とマイクロソフトが実写と見まがうほどの表現力を備えた新しいハードを市場に投入してきました。ハードの性能が上がるたびに、ソフトの表現力はあがり、それにつられてユーザーが要求する質もあがります。ところが、大変なのはソフトメーカーです。ユーザーの要求を満たすために、日々研究を重ねなけばなりません。ゲームハードが違えば開発環境が変わりますし、同じメーカーのハードでも世代によって開発の方法は変わってきます。また、開発に使うソフトウェアなども、バージョンアップを繰り返しています。いつまでも同じ環境で開発してはいられないのです。
さて、専門学校に話を戻しましょう。たとえば、あるゲームハードに使う開発環境を2年かけて専門学校で勉強しても、それが卒業した時のトップシェアのハードで使われている開発環境とは限らないのです。これはコンピュータソフトウェア開発の極端な例ですけれども、コンピュータを使う職種すべてにも同じことが言えます。ビジネスで用いられる一般的なコンピュータの世界ではWindowsが標準的なOSとして扱われていますが、これも頻繁にバージョンアップを繰り返していますし、ワードやエクセルといったビジネスソフトウェアも同様です。また、建築デザインなどで用いられる三次元CADソフト、美術系デザインで使われるフォトショップやイラストレーターなどにも同じことが言えます。基本的に、同じ名前のソフトであれば、バージョンが上がったとしても操作感はだいたい同じ作りになっていますけれども、新しい機能が搭載されれば、当然新しい操作方法が加わります。三ヶ月で時代遅れになるというコンピュータの世界ですから、入学した時と卒業する時では現場の状況はすっかり変わってきているでしょう。とはいえ、入学時に三年後の最新の環境を手に入れることは難しいですから、せめて三年後でも現役でいるであろう環境を使って勉強したいものです。
▼設備を使いこなしているか?
その昔、多くの中学校や高校が高いお金をかけて、「LL教室」という英語を勉強するための特別な教室を作りました。すべての机にはカセットテープが再生できるデッキが埋め込まれ、ヘッドフォンを通じて繰り返して発音の練習ができるという素晴らしい教室です。これで日本人の英語力(とりわけ、発音とリスニング力)は飛躍的に向上するはずでした。しかし、結果は現状の通りです。どうしてそういうことが起きたのでしょうか? それは、せっかく素晴らしい設備を導入したにも関わらず、それを効果的に授業で使うことのできる英語教師が少なかったからです。
新しい設備を導入することはお金をかければいくらでもできます。しかし、それを授業で使いこなすことができる教師がいければ、立派な設備もただの塊です。授業で使いこなすには、その機械や設備に精通した教師だけでなく、カリキュラムが整っていることも重要です。専門学校の中には、立派な設備をうたい文句にしている学校がありますが、それを使った授業が効果的に行われているのかを、オリエンテーションや体験入学でしっかりとチェックする必要があるでしょう。
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